抄録
カテーテル機能不全は腹膜透析において比較的頻度の高い合併症の一つであり,原因としてはカテーテル位置異常・フィブリン沈着・大網巻絡・その他の腹腔内臓器による閉塞などがある.しかし卵管采による腹膜透析カテーテル閉塞の報告例は少ない.われわれは卵管采による腹膜透析カテーテル閉塞に対し,腹腔鏡下に閉塞解除・卵管固定を施行することに成功した1例を経験したので報告する.症例は慢性腎不全(腎硬化症)にて当科通院中の76歳女性.2011年7月7日にSMAP法にて腹膜透析カテーテル留置.7月25日に連続携行式腹膜透析(CAPD)にて腹膜透析を開始した.しかし,7月28日(導入4日目)に自動腹膜透析(APD)に切り替えたところ,APD初日は問題を認めなかったが,APD2日目の初回注液時に突然注排液不能となった.腹膜透析は不可能となったが,残腎機能もあり以後は食事療法で対応した.腹膜透析カテーテル内に造影剤を注入したところ,オクトパスサインと呼ばれる陰影欠損を認め,カテーテル側孔および内腔の閉塞が疑われた.8月29日に腹腔鏡を施行したところ,腹膜透析カテーテル造影に一致する箇所に,右卵管采がカテーテル側孔から嵌入し,内腔を閉塞している所見を認めた.卵管采を把持鉗子で愛護的に除去し,カテーテルにヘパリン加生食を急速注入してカテーテル内腔に残存した卵管采組織をカテーテル末端から排出し,把持鉗子を用いて除去した.再発予防を目的に,体外結紮器を用いて卵管漿膜を壁側腹膜に縫合固定した.経カテーテル的にヘパリン添加生食を200mL腹腔内貯留して閉創した.術後8日目に問題なくCAPDを再開することができた.