2012 年 45 巻 5 号 p. 427-431
症例は55歳,男性.慢性糸球体腎炎による慢性腎不全に対して,1997年に腹膜透析を導入された.腹膜硬化が強くなり,2007年より血液透析に移行となった.2009年9月より嘔吐と食思不振を呈するようになった.腹部CTおよび胃十二指腸造影検査の結果,十二指腸水平脚での閉塞を認め,上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)と診断した.保存的加療を行ったが症状は改善しなかった.その後,胃空腸吻合術を施行したが,術後,縫合不全を生じ死亡した.腹膜透析経験患者におけるSMA症候群に対して外科的治療を施行した症例は,文献上2例あるが,いずれも術後に死亡の転帰をたどっている.腹膜透析経験患者におけるSMA症候群の治療は非常に困難である.