日本透析医学会雑誌
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原著
当院在宅血液透析患者に対する自己穿刺への取り組みと合併症に関する検討
佐々木 裕介小川 智也金山 由紀山口 由美子永峯 大輔伊佐 祐也本塚 旭関 典枝伊勢 康雄長尾 典子田邉 厚子岩永 みずき木場 藤太野入 千絵松田 昭彦御手洗 哲也
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2013 年 46 巻 2 号 p. 185-191

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抄録
[目的]近年,本邦でも在宅血液透析(home hemodialysis:HHD)が普及してきたが,バスキュラーアクセス(vascular access:VA)に難渋する症例も見受けられる.安定したHHDを行うためには良好なVAを持つことが重要である.当院で導入したHHD患者のVAについて,HHD導入前から現在に至るまでのVA維持管理の状況を分析する.[対象・方法]当院にてHHDを管理している慢性維持透析患者4名(42.8±7.1歳,男:女2:2,HHD施行期間20.8±20.5か月)(以下表記は平均±標準偏差:mean±SDである)を対象とした.HHD導入前指導としてVAのオリエンテーションからHHD導入後の穿刺やトラブル対処について,外来受診時の状況聴取や各回治療経過報告記録から後ろ向きに検討した.[結果]HHD導入前における全体平均指導回数27.3±10.9回(mean±SD),このうち穿刺指導回数21.5±9.0回(mean±SD)であった.HHD導入後のVAトラブル内訳は誤穿刺による内出血が11回,穿刺部疼痛・腫脹が6回,静脈圧上昇や穿刺部痛による穿刺位置変更が7回,PTA施行が1回,穿刺再指導が2回であった.鋭利針によるトラブル発生は腫脹や疼痛が生じるため,患者のストレスに大きく影響しており,一方でボタンホール穿刺の方がストレス軽減していた.[結語]自己穿刺の習得には時間がかかり,穿刺指導は早期から行う必要があると考えられた.BH穿刺は穿刺トラブルの軽減につながり,患者の安心感が得られる穿刺として,上手に活用していくべきと考える.しかしBH穿刺が困難な患者や,BH穿刺が入らない時の対応として鋭利針での穿刺指導を行う必要がある.HHD患者のVA管理において,個々の患者にあった穿刺法をしっかり習得し,透析スタッフとともに日々の定期的な観察を継続することが大切である.
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© 2013 一般社団法人 日本透析医学会
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