日本透析医学会雑誌
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原著
手背部の透析アミロイドーシスの病態と治療
―手伸筋腱狭窄性腱鞘炎―
今井 亮小野 利彦岩元 則幸
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2013 年 46 巻 3 号 p. 379-388

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抄録

[目的]手背部の指伸筋腱障害は,透析患者によくみられるにもかかわらず,その病態は解明されていない.この研究の目的は,透析患者における手背部の指伸筋腱障害の原因と発生頻度と症状を明らかにし,そして手術適応を検討することである.[対象]対象は,手関節背側の腫脹を持ち,超音波検査にて確認された伸筋腱腱鞘滑膜の増生を持つ50患者71手である.[結果]1)有病率について,手背部の指伸筋腱障害は,透析歴15年以上の患者に発生していた.有病率は透析歴が長くなるに従って増加していた;透析期間10~19年の有病率は2.7%,20~29年は34.9%,30年以上は82.8%であった.2)自覚症状について,腫脹が26例,疼痛が5例,指の伸展制限が3例であった.自覚症状のない患者が約半数にみられた.3)超音波検査は,手背部の指伸筋腱障害の補助診断法として有用であった.4)手術的治療を行った5例において,手術時に採取された滑膜・伸筋支帯・腱が病理組織学的に検査され,これらの組織にアミロイドの沈着が認められた.5)手根管症候群,アミロイド骨嚢胞,アミロイド肩関節症などの透析アミロイドーシスが,手背部の指伸筋腱障害例の94%に合併していた.[考察]手背部の指伸筋腱障害は,腱滑膜・伸筋支帯にアミロイドが沈着して発症する狭窄性腱鞘炎と考えられる.臨床所見と超音波検査が本疾患の診断に有用である.疾患が進行すると,手背部の腫脹と疼痛,そして腱の肥大が生じる.疾患の末期には,腱の変性と指の可動域制限が特徴である.腱の肥大と腱滑膜の増生がみられる進行期に対しては積極的な手術療法が適応である.

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© 2013 一般社団法人 日本透析医学会
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