日本透析医学会雑誌
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原著
HIV感染者における透析医療の推進に関する研究
―拠点病院でのアンケート調査―
秋葉 隆日ノ下 文彦今村 顕史
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2013 年 46 巻 9 号 p. 931-936

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抄録

平成24年度われわれは,エイズ感染者の透析医療の確保に関して調査し,公的な援助なしに民間施設がHIV感染者を受け入れるには多くの難関があることを明らかにした.その結果を踏まえて,全国の拠点病院に,透析患者の透析の確保の状況と,透析施設への支援活動についてアンケート調査を行った.全国のブロック拠点病院・中核拠点病院・拠点病院380施設にアンケートを発送,回答190通(回答率は50.0%)を得た.回答施設はブロック拠点11,中核拠点35,拠点121,いずれでもない4病院で平均入院病床数542床,記載のあった172施設には腎臓内科医平均3.05名,泌尿器科医3.79名が在籍し,透析装置は155施設,平均17.2台保有されていた.HIV感染者で透析導入が必要だったのは28施設で血液透析28名,腹膜透析16名の計44名で,(1) 自院で導入・自院で慢性透析19例,(2) 自院で導入・他院で慢性透析11例,(3) 紹介の上,他院で導入・慢性透析7例,の37例だった.透析患者の入院依頼では,(1) 入院受け入れ12例,(2) 入院断り11例の計33例,他院で管理中のHIV透析患者の外来診療依頼は外来受け入れ12例が経験されていた.「針刺し事故についての対応」は,(1) 対応しない23.6%,(2) 通常時間内のみ対応4.5%,(3) 夜間・休日とも対応61.9%,と3/4の施設が対応していたものの,祝日や夜間対応のため透析施設にHIV暴露後予防内服薬をあらかじめ貸与していない施設は69.7%と高率だった.また地域の医療施設に対してHIV感染症についての啓発活動を定期的に行っていない施設が63%と過半数で,さらに透析スタッフ向けに行っている施設は全体の6%にすぎなかった.慢性腎不全患者の透析医療は約半数が拠点病院で,残りの半数が地域の透析施設と連携して行われているものの,拠点病院からの透析施設へのサポート体制が不十分な状況が明らかとなった.

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© 2013 一般社団法人 日本透析医学会
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