日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
原著
緊急消化管内視鏡検査を要した血液透析症例
—当院における過去6年間の臨床的検討—
宮澤 晴久大河原 晋伊藤 聖学植田 裕一郎賀来 佳男平井 啓之星野 太郎名畑 あおい森 穂波吉田 泉宮谷 博幸吉田 行雄田部井 薫
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 47 巻 6 号 p. 351-357

詳細
抄録
【目的】当院で緊急消化管内視鏡検査を要した症例をretrospectiveに集計し臨床的背景を明らかにすること. 【対象と方法】対象は2005年1月から2010年12月までの6年間に消化管出血もしくはその疑いのために当院で緊急消化管内視鏡検査を施行した維持血液透析 (HD) 症例44例. 各症例で緊急消化管内視鏡検査施行前後の臨床経過について解析を行った. 【結果】緊急内視鏡検査は重複例を含めて, 上部消化管内視鏡41例, 下部消化管内視鏡17例, 小腸内視鏡6例, カプセル内視鏡4例であった. 初発症状として黒色便が26例, 吐血が13例, 血便が4例, その他が1例であった. 内視鏡所見より原因疾患として, 胃潰瘍が13例と最も多く, 次いでangiodysplasiaが11例, 消化管原発悪性腫瘍が5例 (胃癌4例, 大腸癌1例) であった. しかしながら3例では原因疾患を特定することができなかった. 対象症例の入院時ヘモグロビン (Hb) 濃度の中央値である7.0g/dLをもとに2群 (Hb<7.0g/dL, Hb≧7.0g/dL) に分け, 臨床的背景の差異についての検討も施行した. その結果, Hb<7.0g/dLの群で, 輸血量およびプロトンポンプ阻害薬/ヒスタミンH2受容体拮抗薬の使用頻度が有意に高く, 入院期間も有意に長い結果であった. 両群間における原因疾患の比較でも有意な相違を認め, Hb<7.0g/dLの群ではangiodysplasiaが, Hb≧7.0g/dLの群では消化管原発悪性腫瘍が多かった. 【結語】緊急消化管内視鏡検査を施行した維持HD症例では, 消化管出血の原因として潰瘍性疾患とともにangiodysplasiaおよび消化管原発悪性腫瘍の頻度が高かった.
著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top