2014 年 47 巻 6 号 p. 375-379
ポリスルホン (PS) 膜ダイアライザから親水化剤ポリビニルピロリドン (PVP) が溶出することは, 透析療法における問題の一つである. 透析治療を施行するうえでは膜溶出PVPの迅速測定が望ましい. 本研究では, PVPの紫外線スペクトルを用いた簡易的かつ迅速測定法 (UV-s法) を確立すべく, 従来のヨウ素呈色法であるMüller法 (M法) と比較検討した. その結果, PVP溶解液に対して, PVP濃度10mg/L以下ではM法とUV-s法はr=0.970と有意な相関関係があり (p<0.001), 10~100mg/LのPVP濃度でもr=0.993と有意な相関が認められた (p<0.001). また, PS膜ダイアライザPS-1.6UW (n=5) を用いて, 生理食塩液1.0Lによる洗浄開始0.5Lおよび1.0L時点におけるPVP溶出量の比較では, 0.5L洗浄時はM法 : 2.8±2.9mg/L, UV-s法 : 3.6±2.1mg/L, 1.0L洗浄時はM法 : 2.0±2.1mg/L, UV-s法 : 3.1±0.9mg/Lと両測定法の間に差を認めず, UV-s法を用いたPVP測定は可能であった. 以上より, PS膜から溶出するPVPをUV-s法を用いることでM法よりも迅速的に測定できることが示唆された.