抄録
本邦の血液透析患者数は31万人に増加し, これに伴い重症下肢虚血 (critical limb ischemia : CLI) も多くみられるようになった. CLIによる下肢大切断は生命予後に多大な悪影響を与えることが知られる. このためCLIの治療目標は下肢切断を回避し, 可能な限り歩行機能を温存させ生命予後の改善に繋げることである. 今回, われわれは維持血液透析患者に発症したCLIに対し外科的血行再建の一つである血栓内膜摘除術 (thromboendarterctomy : TEA) を行い救肢できた1例を経験した. 症例は64歳男性, 多発性囊胞腎由来の慢性腎不全のため2003年6月より腹膜透析導入, 2009年6月から血液透析に移行. 2014年に入り右下肢間欠性跛行が出現し, 同年5月頃には安静時疼痛へと病状が増悪した. 下肢血管造影で右総大腿動脈ならびに右膝窩動脈に限局性病変が認められたため, 同年6月にTEAを行い症状の改善に至った. 血液透析患者のCLIにおいて, TEAは限局性病変に対して今なお有効な治療選択肢の一つとなり得ることが示唆された.