2016 年 49 巻 8 号 p. 547-551
症例は常染色体優性多発性囊胞腎 (ADPKD) を原疾患とする血液透析歴2年の70歳代女性. 透析導入時に肝性脳症による意識障害を発症していた. 多発肝囊胞の圧迫に起因した門脈圧亢進症による肝性脳症を合併していたと考えられた. 今回, 上腹部痛と透析困難症, 肝機能障害増悪の精査を目的に当科へ入院した. CT画像上, 肝門部の囊胞による下大静脈の圧排, 狭小化を認めた. 炎症反応の上昇や各種画像所見から, 腹痛の原因は肝囊胞感染と診断した. 血液培養で腸球菌を検出し抗菌薬にて加療したが, 治療抵抗性であった. 徐々に全身状態は悪化し, 肝不全進行に伴い第35病日に死亡した. 一般に, ADPKDにおける囊胞性肝病変は重症化することは少ないと海外の成書で記載されているが, 本邦ではADPKD透析患者の生命予後を決める大切な因子が肝囊胞感染であることがすでに報告されており, 本例はADPKD患者に対し肝囊胞への対応の重要性が示唆された症例として報告する.