2016 年 49 巻 8 号 p. 553-558
症例は49歳, 男性. 糖尿病性腎症により血液透析導入され, 5年前にCMLと診断され, 第一世代TKIであるイマチニブ400mg/日の内服が開始された. 3年間の長期内服後, 急速に進行する両側手指の壊死性潰瘍が多発し入院となった. 内科治療に反応せず最終的に手指の切断に至った. 病理組織では, 中膜の石灰化は軽度で, 血管内膜の線維性肥厚が強く内腔が狭小化しており, 内膜の浮腫性肥厚を特徴とするカルシフィラキシスとは一致しなかった. 血管障害の成因として, イマチニブの休薬・再開と潰瘍の病勢が一致していることから, イマチニブによる血管障害が病態の中心にあると診断した. 近年第二世代TKIであるニロチニブによる末梢動脈障害の報告を認めるが, イマチニブの血管障害の危険性は比較的少ないとされている. 透析・糖尿病という潜在的血管障害や腎不全による代謝低下を有する維持透析患者では, イマチニブによる血管障害が顕在化する可能性が臨床的に示された.