慢性腎臓病における甲状腺機能異常について自験例を中心に考察する. 末期腎不全 (ESRD) は非甲状腺疾患non-thyroidal illness (NTI) であるが, 遊離トリヨードサイロニン (fT3)/遊離サイロキシン (fT4) 比は低下していなかった. 軽度ながらfT4, fT3低値, 甲状腺刺激ホルモン (TSH) 高値が特徴で, NTIにおける機能判断には, それぞれの病態に応じた基準範囲と比較する必要がある. ESRD基準範囲と比較しても甲状腺機能低下症の頻度は潜在性10.3%, 顕性1.4%と高いが, 海藻過剰摂取を制限するのみでTSHは著明に改善した. 過剰ヨードによる可逆性甲状腺機能低下症は, 慢性腎臓病においても進行に応じて高頻度にみられ, 腎臓のヨード排泄能が甲状腺の自動調節機能に重要であることが示唆された. ESRDでは粘液水腫に類似した症状を呈することが多い. 甲状腺結節の頻度も高いが, 多くは良性である.