日本透析医学会雑誌
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総説
腎性貧血治療におけるHIF stabilizerの臨床的展望
栗山 哲柳沼 樹宏平尾 磨樹川口 良人
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2020 年 53 巻 10 号 p. 493-503

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抄録

HIF stabilizerは, HIFを活性化し造血を刺激する新規腎性貧血治療薬である. 本剤の貧血改善効果は, 第二相・第三相臨床試験の結果から, ESAと比べ非劣性であることが示されている. ESA治療は長期にわたる臨床経験から, QOL改善に留まらず, 心・腎・貧血 (CRA) 症候群の改善による心・腎保護作用や, 低栄養・慢性炎症・動脈硬化 (MIA) 症候群に関連した鉄代謝異常などの改善が示されている. 今後, HIF stabilizerにも同様の効果が期待されている. 一方, HIF stabilizerには標的遺伝子が多数あり, 有害事象の面でESAとは異なる可能性がある. HIF stabilizerをCKD診療にどのように取り入れるかは, 臨床情報が少ない現在, 診療指針を構築する段階ではない. 本稿では, 集積されたESAでの知見にHIF stabilizerの最新の成績を加えて勘案し, HIF stabilizerの使用法に推奨意見は述べる. 適応が推奨される病態として, 保存期のCRA症候群, 透析期のESA抵抗性貧血やMIA症候群に類似の鉄代謝異常など, が考えられる.

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© 2020 一般社団法人 日本透析医学会
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