2020 年 53 巻 10 号 p. 531-535
症例は38歳男性. 紹介医で維持透析を施行しており, 定期腹部エコーで腎に約3cmの腫瘤性病変を指摘され, 当科に紹介受診. CT, MRIで右骨盤内に交叉性融合腎を認め, 腎から突出する約3cmの充実性腫瘤性病変を認めた. 腎実質は萎縮し, 囊胞が多発していた. 腫瘍はわずかな造影効果を伴い, また, 偽被膜を有していた. 腎細胞癌cT1aN0M0の診断で, 開腹融合腎摘除術を施行した. 手術時間は3時間35分, 出血量は163mLであった. 病理所見は, 後天性囊胞随伴腎細胞癌, pT1a (G2>G3), 切除断端は陰性であった. 維持透析患者の交叉性融合腎に合併した腎細胞癌の1例について報告する.