日本透析医学会雑誌
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症例報告
脳内局所組織酸素飽和度 (rSO2) の観察を契機として高度内頸動脈狭窄症を覚知した1例
堀籠 啓太伊藤 聖学大河原 晋相川 利子今田 悟宮澤 晴久下山 博史高雄 泰行下山 博身渡部 晃久森下 義幸
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2020 年 53 巻 2 号 p. 77-83

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抄録

症例は61歳, 男性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全により, 週3回の血液透析 (HD) 中であり, 透析後半に頻回の血圧低下を起こしていた. 身体所見や心胸郭比, 循環血液量モニタリングからは適正な体液の状態と判断していた. 本人の同意を得たうえで, 脳内局所酸素飽和度 (rSO2) のモニタリングを行った. HD中のモニタリングでは, HD開始120分後まで緩徐に平均血圧が低下した際, 右前額部において脳内rSO2の低下が観察された. 脳内の虚血性病変を疑い, 核磁気共鳴画像を撮影したところ, 右内頸動脈の高度狭窄が確認された. 単一光子放射断層撮影では安静時の脳血流は保たれていたため, 手術には至らず, 現在も経過観察中である. HD患者の脳内rSO2のモニタリングは脳内虚血性疾患の診断に寄与する可能性がある.

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© 2020 一般社団法人 日本透析医学会
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