2020 年 53 巻 3 号 p. 139-145
血液透析患者のB型肝炎ウイルス (HBV) におけるHBs抗原陽性率, HBs抗体またはHBc抗体陽性率, C型肝炎ウイルス (HCV) におけるHCV抗体陽性率は健常人と比較して高率といわれている. 2016年から2018年にかけて当院で外来血液維持透析を行っている追跡可能82名を対象とし, HBV, HCV感染実態の調査を行った. HBVについてキャリアはおらず既往感染は31名 (37.8%) で内HBc抗体のみ陽性が6名 (7.3%) おりHBc抗体測定の意義を感じた. HCVについてキャリアは6名, 既往感染は2名でありHCVキャリア6名中5名 (ジェノタイプⅠ型4名, Ⅱ型1名) について直接作用型抗HCV薬 (DAA) を使用し全例HCV-RNA持続陰性化を達成している. 6名中4名ではDAA製剤投与前に肝癌合併を認めていた. 今後DAA製剤投与が肝合併疾患を減らす可能性もあるが肝癌を中心に精査は厳重に行っている. 感染対策として当院では携帯用フローチャートを作成することで感染対策の意識向上, 情報共有に役立てているので報告する.