日本透析医学会雑誌
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症例報告
胸水の診断に苦慮した腹膜透析患者の1例
喜多 秀仁上野 恵輝中島 英林 秀樹水田 耕治橋本 寛文
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2021 年 54 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

症例は56歳,男性.2018年5月にCAPDを導入(原疾患:糖尿病性腎症).導入2か月後,倦怠感のため外来を受診.胸部X線検査で右胸水貯留を認めた.CAPD中断で胸水は減少したが,CAPD再開後に再燃した.胸水穿刺で漏出性胸水と判断した.胸部X線検査の経過を踏まえ,横隔膜交通症と判断し,胸腔鏡下横隔膜縫縮術を施行.術中,横隔膜に瘻孔を認め,インジゴカルミン混合の透析液を腹腔内に投与し同部位からの漏出を確認.瘻孔は自動吻合器で切除.術後2週間後にCAPDを再開,右胸水貯留を認めた.横隔膜交通症の再燃を疑い,インジゴカルミン混合の透析液を腹腔内に貯留したのち,胸水穿刺を行った.胸水にはインジゴカルミンの着色はみられず,滲出性胸水であった.癌性胸水や結核性胸水が除外できたことから尿毒症性胸膜炎と診断し,HD併用療法に変更,胸水は減少し,現在のところ再燃を認めていない.

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© 2021 一般社団法人 日本透析医学会
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