2022 年 55 巻 5 号 p. 309-317
透析患者におけるがん治療の実態を明らかにすることを目的とした.2010~2015年に新規診断された18~79歳の大腸,胃,肺がん患者のがん治療の有無と受療内容を,大阪府がん登録とDPCデータの府内36施設のリンケージデータで同定した,維持透析患者(687例)と非透析患者(47,900例)との間で進展度ごとに比較した.早期の大腸,胃がんでは,透析患者は非透析患者に比べ手術が少なく,内視鏡治療が多かった.早期の肺がんでは放射線療法が多かった.いずれのがんでも,進展度にかかわらず化学療法を組み合せた治療が少なかった.化学療法単独は,遠隔転移のある胃,肺がんで少なかった.肺がんは進展度にかかわらず,透析患者に無治療が多かった.透析患者は非透析患者に比し,手術や化学療法に消極的であった.透析患者に対するがん治療,とくに化学療法に関するエビデンスの蓄積とそれに続くガイドラインの作成が求められる.