日本透析医学会雑誌
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原著
維持血液透析患者に発生した膀胱癌の治療成績
伊丹 祥隆影林 頼明大森 千尋井上 剛志松村 善昭青木 勝也
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2022 年 55 巻 5 号 p. 319-325

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抄録

【目的】維持血液透析中の膀胱癌患者の当院での治療成績を検討した.【対象と方法】2010年1月から2019年12月の間に当院で膀胱癌に対する加療を行った男性5名,女性1名を対象とした.透析状況,臨床病理学的結果,手術術式,予後などを後方視的に検証した.【結果】透析原疾患は糖尿病性腎症が4例,不明が2例,transurethral resection of the bladder tumor(TURBT)時の年齢中央値は68歳,透析歴の中央値は53か月であった.初期症状は血尿が5例,不正性器出血が1例,術前尿細胞診はclass 4が5例,class 5が1例であった.全例TURBTを施行し,病理組織で尿路上皮癌5例,小細胞神経内分泌癌1例であった.全例でpT1以上,High gradeであった.3例で膀胱全摘を施行した.TURBT後の膀胱内再発は2例,膀胱全摘後の転移は1例に認め,癌死は転移症例1例であった.【結語】維持血液透析中に発見された膀胱癌は悪性度が高く,進行症例が多いため,透析患者においても定期的な検尿や尿細胞診でのフォローが重要である.

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© 2022 一般社団法人 日本透析医学会
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