日本透析医学会雑誌
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症例報告
末期腎不全患者の巻貝摂取によって発症し遷延したテトラミン中毒の1例
宮﨑 令奈片山 由里大久保 碧髙村 毅松本 直人黒田 敬史杉本 弘樹末廣 耀平久保 英祐戸崎 武高橋 康人笠井 健司坪井 伸夫横尾 隆
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2025 年 58 巻 6 号 p. 288-293

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抄録

症例は末期腎不全に対して血液維持透析中の71歳男性.非透析日の夜,食料品店で購入した巻貝を自宅で唾液腺を除去せずに煮沸後摂取したところ,数十分後から嘔気,四肢脱力を自覚しはじめ,次第に増悪したため当院の救急外来を受診した.身体所見上,構音障害,複視,四肢脱力などの神経学的異常がみられたが,頭蓋内に明らかな急性期病変を認めず,非特異的な全身症状からテトラミン中毒と診断された.来院後も症状は持続していたが,喫食13時間後に行った血液透析が著効し完全消失した.巻貝の唾液腺に含まれるテトラミンは腎排泄性物質のため,高度腎機能低下患者では中毒症状が出現し遷延・重症化しやすい.テトラミンは血漿タンパク質結合性が低い小分子化合物であり,血液透析で容易に除去できる.そのため,高度腎機能低下患者に巻貝喫食の背景があり,これらの症状が出現した際は,テトラミン中毒を疑い速やかに血液透析療法を施行することが肝心である.

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© 一般社団法人 日本透析医学会
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