日本透析医学会雑誌
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症例報告
腹膜透析カテーテル出口部の皮膚ノカルジア症
佐藤 哲生矢口 貴志室谷 典義
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2025 年 58 巻 6 号 p. 310-315

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抄録

妊娠高血圧腎症で腹膜透析(PD)となりPD歴7年間の48歳女性.関節リウマチと乾癬に対し長期にステロイド内服中で,ST合剤を予防内服していた.PDカテーテル出口部から黄白色クリーム状の膿が出るようになり,セフェム系やキノロン系薬剤で治療したが無効であった.膿の細菌培養からNocardiaが同定された.菌種を同定するため16S rRNA 遺伝子解析を行い,さらに抗菌薬感受性を調べた.結果はNocardia farcinicaで,経口薬ではST合剤とAMPC/CVAに感受性があった.それぞれを内服し膿の消失を認めたが,2~3か月で再燃したため,抗菌薬治療は断念した.カテーテル抜去と別部位に新たなカテーテルを留置したところ再発はなかった.難治性PDカテーテル関連感染症において,原因菌として非定型細菌も疑う必要があるがNocardiaも考慮に入れる必要があると考えられた.過去30年間の医中誌およびPubMedの検索にてPDカテーテル出口部皮膚ノカルジア症を単独で発症した報告はなくここに報告する.

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© 一般社団法人 日本透析医学会
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