2025 年 58 巻 9 号 p. 441-445
69歳男性の腹膜透析カテーテル出口部感染症例を報告する.患者はX‒10年に末期腎不全のため持続携行式腹膜透析を導入し,X‒7年から週1回の血液透析を併用していた.X年3月に出口部の発赤・排膿を認め,Serratia marcescensが検出されたが,抗菌薬治療に対する反応が乏しかった.培養結果からMycobacterium abscessus subsp. abscessus感染と判明し,多剤併用療法を開始した.感染の背景として,出口部周囲に限局した水疱性類天疱瘡による皮膚バリア機能の低下が関与したと考えられた.カテーテル抜去後も4か月の抗菌療法を継続し,症状は改善した.本例は,難治性抗酸菌感染症の治療戦略に関する貴重な報告であり,出口部皮膚の状態管理とカテーテル抜去および適切な抗菌療法の重要性を示す.