維持血液透析患者は心不全合併率が高く,駆出率が正常でも潜在的心機能障害を有する.アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)は心不全に有効だが,ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)を上昇させるため,ドライウェイト設定で体液過剰との判別が難しくなる.一方,N 末端プロB 型ナトリウム利尿ペプチド(NT‒proBNP)はARNI の影響を受けず,30%以上の上昇は心不全悪化の指標とされる.本研究ではARNI 導入102 例を後ろ向きに解析し,hANP・NT‒proBNP・血圧・心胸比・DW を評価した.hANP は約2.2 倍に上昇したが,NT‒proBNP は低下し,血圧・心胸比・DW の悪化は認めなかった.NT‒proBNP 上昇30%未満群ではhANP 上昇は2倍前後で30%以上上昇群より有意に低く,多変量解析ではNT‒proBNP 30%以上上昇と糖尿病がhANP 上昇と関連した.hANP 2 倍前後の上昇は薬理作用による可能性が高いと考えられた.