鉄欠乏性貧血は透析と関連が深く多くの透析患者が鉄の補充を受けている.ただし鉄の補充には副作用の問題があり,とくに内服鉄では消化器症状による継続困難例が少なくない.本症例は40歳代男性,糖尿病を原疾患とする在宅血液透析歴3年の患者である.鉄欠乏性貧血を認め鉄剤内服を開始したが,下痢により内服困難となった.少量鉄で効率の良い治療を行う必要があると考え,鉄補充は中断し,まずへプシジン抑制により鉄利用効率を改善し,その後に少量静注鉄で治療する方針とした.へプシジン抑制目的で二次性副甲状腺機能亢進症の管理と酢酸フリー透析を行い,治療開始5か月目にはTSAT上昇,9か月目より少量静注鉄を開始,その後Hb は基準値内で安定した.本症例は在宅血液透析という通院頻度の少ないなか,非鉄的介入により代謝環境を整え,少量静注鉄で管理した症例である.本症例を通じ透析患者の鉄欠乏性貧血に対する多面的アプローチの有用性を示唆した.