抄録
Ca濃度3.75mEq/lの透析液を用いて長期透析を行っている慢性腎不全患者のうち, 透析前血清Ca値が8.5mg/dl以下の30例に対して1日量0.75μgの1α-OH-D3 (以下1α-D3) を朝1回連日投与して18週間観察し次の結果を得た.
透析前血清Ca値が, 投与後18週迄のいずれかの時点で0.5mg/dl以上増加したものを有効として, 1α-D3の有効率をみると66.7%の有効率であった. 対象症例中PTH値が異常高値を示した症例が11例 (36.7%) 存在していた為, PTH異常高値群と正常群に分けて同様に有効率をみたが, 両群間に差はなかった (P, ns). 1α-D3投与後のV. D3代謝産物の変化は次の如くであった.
(1) 25-OH-D3
投与前平均値は34.2±12.0ng/mlで正常範囲内 (10-55ng/ml) にあったが, 投与6週間後には21.8±12.9ng/mlと有意に (P<0.05) 減少し, 12週後, 18週後も同様であった.
(2) 1, 25-(OH)2-D3
投与前平均値は28.9±11.7pg/mlと正常範囲 (27-43pg/ml) の下限であったが, 投与6週後には40.5±10.0pg/mlと有意に (P<0.05) 増加したが, 投与12週後には27.8±6.3pg/mlとほぼ投与前値と等しい値に減少し, 投与18週後も同様であった.
(3) 24, 25-(OH)2-D3
投与前平均値は22.9±51.1ng/mlとかなり高値であった (正常値1.8-3.8ng/ml). 投与6週後には6.2±5.7ng/mlと減少したが有意差はなく, 12週後は23±2.8ng/ml, 18週後は1.1±1.0ng/mlと減少した.