Hemofiltration (以下HF) の臨床応用の可能性と, その有効性について検討した. 尿素をはじめとする低分子量物質から, 分子量約5,000のイヌリンまでのsieving coefficientは, いずれも1.0に近く, HFが糸球体濾過と近似していることを示した. 1回約20
lの体液交換による尿素, クレアチニン, 尿酸, リンの除去率は40%を越え, 血清電解質, 血液ガスの改善も十分であった.
14例の末期腎不全患者に対し, HFによる治療を行い, そのうち8例には, 18か月に及ぶHFによる週3回の継続治療を行い, 臨床検討を加えた. HFの施行により, 不均衡症候群の発生は激減し, 血液透析 (以下HD) にはみられない臨床効果が得られた. また, 無腎患者の輸血回数が減少したこと, 緑内障を合併した症例の眼痛がHFにより消失したことは, 少数例ではあるが, HFの臨床効果といえる. 副作用については, 心配されたdepletion syndromeをはじめ, 問題となる副作用を認めず, 諸検査成績においても, 増悪する項目はみられなかった.
HFにおける溶質移動をHDと比較検討した. 末期腎不全患者を2群に分け, 経口投与した
22Naが平衡状態に達した後, HFまたはHDを開始した. 血清
22Na濃度は両群とも低下したが, 治療開始2時間以降, HF群がHD群より有意に高値を示した. しかし, 体重減少量に有意差を認めないにもかかわらず,
22Naの総除去量はHF群がHD群に比し, 有意に多量であった. また血漿浸透圧は, HD群がHF群より急速に低下した. このことより, HF施行時において,
22NaはHD施行時より円滑かつ適切にfluid space間を移動していることが示唆された.
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