人工透析研究会会誌
Online ISSN : 1884-6203
Print ISSN : 0288-7045
ISSN-L : 0288-7045
13 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 田中 寛
    1980 年13 巻2 号 p. 483-492
    発行日: 1980/07/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Hemofiltration (以下HF) の臨床応用の可能性と, その有効性について検討した. 尿素をはじめとする低分子量物質から, 分子量約5,000のイヌリンまでのsieving coefficientは, いずれも1.0に近く, HFが糸球体濾過と近似していることを示した. 1回約20lの体液交換による尿素, クレアチニン, 尿酸, リンの除去率は40%を越え, 血清電解質, 血液ガスの改善も十分であった.
    14例の末期腎不全患者に対し, HFによる治療を行い, そのうち8例には, 18か月に及ぶHFによる週3回の継続治療を行い, 臨床検討を加えた. HFの施行により, 不均衡症候群の発生は激減し, 血液透析 (以下HD) にはみられない臨床効果が得られた. また, 無腎患者の輸血回数が減少したこと, 緑内障を合併した症例の眼痛がHFにより消失したことは, 少数例ではあるが, HFの臨床効果といえる. 副作用については, 心配されたdepletion syndromeをはじめ, 問題となる副作用を認めず, 諸検査成績においても, 増悪する項目はみられなかった.
    HFにおける溶質移動をHDと比較検討した. 末期腎不全患者を2群に分け, 経口投与した22Naが平衡状態に達した後, HFまたはHDを開始した. 血清22Na濃度は両群とも低下したが, 治療開始2時間以降, HF群がHD群より有意に高値を示した. しかし, 体重減少量に有意差を認めないにもかかわらず, 22Naの総除去量はHF群がHD群に比し, 有意に多量であった. また血漿浸透圧は, HD群がHF群より急速に低下した. このことより, HF施行時において, 22NaはHD施行時より円滑かつ適切にfluid space間を移動していることが示唆された.
  • 澤西 謙次, 浮草 実, 原 晃, 斎藤 昇, 川村 寿一, 岡部 達士郎, 岩崎 卓夫, 大上 和行, 武田 道子, 松尾 光雄, 石川 ...
    1980 年13 巻2 号 p. 493-504
    発行日: 1980/07/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    今回我々は血液透析で血圧コントロール困難な2症例について, 重量制御方式に基づく装置で, 置換液はHF-Aを使用し, Hemofiltrationを行ない問題点を分析検討してみた.
    通常の6時間血液透析と比較して, 5時間, 20lの置換液量で生化学的には尿素窒素, クレアチニン, 尿酸の除去率は低いにもかかわらず, 臨床的には自覚症状は極めて良好で, 不均衡症候群の発生頻度も低く, 目的とした低血圧の改善, uremic pruritus及び皮膚色素沈着も著明に改善したことは, いわゆる中分子量物質の除去効率がすぐれている結果と考えられた. その他, Piの除去もすぐれており, アルミゲルの投与を必要としなくなったこと, 並びに, アミノ酸測定でも, 毎回約5gのアミノ酸喪失程度であって, 血液透析と比して良好な結果を得た. その他, 血液透析のみでは改善し難い尿毒症合併症や抗癌剤副作用の軽減等の臨床的応用もあることが示唆され, 血液透析のみの血液浄化療法の欠点をおぎなう有用な治療法とも考えられた.
  • 久保 和雄, 佐中 孜, 鈴木 利昭, 武藤 秀雅, 杉野 信博, 木全 心一
    1980 年13 巻2 号 p. 505-510
    発行日: 1980/07/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    心臓のポンプ機能の評価のため, Swan-Ganz thermodilution catheterを用いて, 左室収縮機能が正常域にあると考えられる心疾患患者20例 (対照群), 長期維持血液透析を行なっている慢性腎不全患者9例, 透析を受けた急性腎不全患者4例, うっ血型心筋症で心不全症状を呈した患者9例について右心カテーテル法を施行した (腎不全患者については透析前に測定した)。その成績を横軸に肺動脈拡張期圧, 縦軸に左室仕事量 (left ventricular stroke work index) をとり, 心機能曲線 (left ventricular function curve) を描き検討を加えた。その結果, 心機能曲線上, うっ血性心不全の症例が右下の心機能低下の部位に分布したのに対して, 透析患者および急性腎不全の患者では, 対照群とほぼ同一部位に分布した。この成績より, 急性および慢性腎不全の症例の多くは, 左室収縮機能の低下はないものと考えられる。また, 心係数は軽度ながら上昇し, 前負荷 (preload) に関係する肺動脈拡張期圧・平均右房圧とも対照群よりもやや高値を示すことより, 腎不全時にみられる左心不全様症状の多くは, 体内水分量の増加による肺うっ血が主因であると考えられる。
  • 入江 康文, 小高 通夫, 嶋田 俊恒, 平沢 博之, 大川 昌権, 添田 耕司, 鹿島 孝, 吉田 豊彦, 佐藤 博
    1980 年13 巻2 号 p. 511-519
    発行日: 1980/07/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Ca濃度3.75mEq/lの透析液を用いて長期透析を行っている慢性腎不全患者のうち, 透析前血清Ca値が8.5mg/dl以下の30例に対して1日量0.75μgの1α-OH-D3 (以下1α-D3) を朝1回連日投与して18週間観察し次の結果を得た.
    透析前血清Ca値が, 投与後18週迄のいずれかの時点で0.5mg/dl以上増加したものを有効として, 1α-D3の有効率をみると66.7%の有効率であった. 対象症例中PTH値が異常高値を示した症例が11例 (36.7%) 存在していた為, PTH異常高値群と正常群に分けて同様に有効率をみたが, 両群間に差はなかった (P, ns). 1α-D3投与後のV. D3代謝産物の変化は次の如くであった.
    (1) 25-OH-D3
    投与前平均値は34.2±12.0ng/mlで正常範囲内 (10-55ng/ml) にあったが, 投与6週間後には21.8±12.9ng/mlと有意に (P<0.05) 減少し, 12週後, 18週後も同様であった.
    (2) 1, 25-(OH)2-D3
    投与前平均値は28.9±11.7pg/mlと正常範囲 (27-43pg/ml) の下限であったが, 投与6週後には40.5±10.0pg/mlと有意に (P<0.05) 増加したが, 投与12週後には27.8±6.3pg/mlとほぼ投与前値と等しい値に減少し, 投与18週後も同様であった.
    (3) 24, 25-(OH)2-D3
    投与前平均値は22.9±51.1ng/mlとかなり高値であった (正常値1.8-3.8ng/ml). 投与6週後には6.2±5.7ng/mlと減少したが有意差はなく, 12週後は23±2.8ng/ml, 18週後は1.1±1.0ng/mlと減少した.
feedback
Top