人工透析研究会会誌
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生体血縁腎移植
秋山 暢夫
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1982 年 15 巻 2 号 p. 251-261

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抄録
1980年12月31日までに, わが国では1700回の腎移植が行われているが, そのうち1461回 (85.9%) が生体腎移植で, 諸外国では約70%が死体腎であるのと著しい対比をなしている. 血縁腎全症例の5年生存率は67.3%で, 移植腎生着率は46.5%であるが, 1971年以降成績は飛躍的に向上し, 最近の3年生存率は慢性透析患者の生存率を約15%上回っている.
血縁腎の生着率はドナー, レシピエントが共有するハプロタイプの数で大まかに規定される. すなわち2-haplotype identical siblingでは5年生着率90%が期待でき, 1-haplotype identicalの親子や兄弟間では50%の生着率にすぎず、 生体からの提供としてはやや不満足な成績である.
1980年の国際組織適合性ワークショップにおいて、 死体腎におけるHLA-DRマッチングと大量輸血の腎生着促進効果が確認された. しかし血縁腎は数が少なく検討から除外されたので, 東大医科研における1980年12月31日までの血縁腎移植97回につき, これらの問題を検討してみた.
HLA-D抗原適合腎の5年生着率は85.5%, 非適合腎は46.5%で, 有意の生着率の差 (P<0.05) があり, 従来の観察を裏付けた. HLA-DR抗原については適合腎81.8%, 非適合腎72.4%であったが, 有意差は認められなかった.
HLA-DR抗原の1つを異にするドナー腎で, 輸血量1200ml以上の群は1年生着率93.3%を示し, 輸血量1000ml以下の群の50.0%との間に有意差 (P<0.01) があった. このことからHLA-DR抗原1コを異にする親子, 兄弟間でも, 十分な量の移植前輸血で腎生着率を2-haplotype identical sibling並に向上せしめうる可能性が認められる.
現在randomの輸血の他に, ドナー予定者からのdonor-specific blood transfusionが試みられはじめ, 200ml, 2週間おき3回の輸血でドナーに対する抗体を生ずることなく, 血縁腎生着率を向上しうることが示されつつある.
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