人工透析研究会会誌
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死体腎移植
横山 健郎柏原 英彦
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1982 年 15 巻 2 号 p. 263-272

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抄録
死体腎移植がわが国で初めて成功したのは昭和43年で, その症例は14年後の現在も健全に社会復帰している. その後, 末期慢性腎不全の根本的治療として死体腎移植が期待されながら, 欧米の諸国と比較してわが国における臨床例は極端に少ない. その要因は, 死体腎提供者の少ない点にある.
貴重な提供腎を効果的に臨床に応用し, 死体腎移植の成績の向上と死体腎移植の普及に種々の努力がなされてきた結果, 最近では移植症例の増加の傾向がみられるようになってきている. 提供腎の呼びかけ, 死体腎移植希望者の登録, HLA検査の普及に加えて, 提供腎の摘出チームのシステム化, 適合者選択コンピューター, オンラインシステムの共同利用システム等も加わって, 同一ドナーからの2腎の複数施設間での移植も行われている.
特に, 死体腎移植システムでの同一ドナーより, 複数施設間で行う死体腎移植は, 適合性の良い組合せを多く選べ, その結果生着率は向上し, 社会復帰率も高く, 貴重な提供腎をより効果的臨床に応用することのできる方法で, 国土の狭く, 人口密度の高い日本においては特に進めて行きたい方式である.
死体腎移植を進めるにあたって, 提供腎の確保と移植免疫抑制とが大きな問題である.
特に死体腎提供については, 一般人の死体腎移植への理解の普及と共に, 内科, 脳外科医への同様な理解と協力とを得る努力が必要である.
移植免疫抑制は, 従来より組織適合性によるhigh rasponderの除外と, 薬剤による免疫抑制がはかられているが, 新たに登場した輸血の効果とその免疫抑制のメカニズムの解析を行い, その結果の積極的な利用により, 免疫学的非反応性を誘導し, 移植成績の向上の期待としたい.
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© 社団法人 日本透析医学会
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