抄録
慢性血液透析症例を対象にcimetidine 400mg/dayを4週間の短期間及び6か月間の長期間に亙り, 各々経口投与し, その血中副甲状腺ホルモン (PTH) 低下作用を中心に検討を行った.
1) 短期間投与によるPTHの変化: PTH高度上昇群では, PTHは投与前8.03±3.63ng/mlから投与4週後5.67±2.94ng/mlと有意に低下し, 投与中止後は再び上昇傾向を示した. PTH軽度上昇群では, PTHは投与前3.36±0.88ng/mlから投与4週後2.56±0.66ng/mlと軽度低下傾向を示したが有意な変化ではなかった. なお, 両群ともに全経過を通じて血清Ca, Pに有意な変化はみられず, cimetidineのPTH低下作用は血清Ca値による二次的効果ではないものと思われた.
2) 長期間投与によるPTHの変化: PTH高度上昇例5名のPTHは, 投与前7.66±3.91ng/mlから投与1か月後で5.17±3.05ng/mlと有意に低下し, 6か月後では3.63±1.12ng/mlまで低下した. 特にPTHが14.39ng/mlと異常高値で, 1α-OH-D3の最小投与量でも容易に高Ca血症を呈するため, 十分な1α-OH-D3投与を行うことができず, 骨痛も著明であった症例では, cimetidine投与によりPTHが低下した時点で, 1α-OH-D3を増量しても高Ca血症とならず, 1α-OH-D3の十分な投与が可能となり骨痛も消失した.
3) 血中cimetidine濃度の推移と血液透析による減少率: cimetidine 200mg経口投与後, 血中cimetidine濃度は4時間で1.84±0.63μg/mlと最高血中濃度に達し, 以後漸減し10時間で0.86±0.33μg/mlまで低下した. 4週間の継続投与で特に蓄積効果は認めなかった. 1回の血液透析による血中cimetidine濃度の減少率は, 平均透析膜面積1.3m2, 5時間透析で69.2±10.5%であった.
いわゆる, 抑制不能性の二次性副甲状腺機能亢進症に対し, cimetidine投与は副甲状腺亜全摘除術の前の1つの試みとして価値があるものと考えられた.