抄録
アミロイドーシスによる腎不全患者6例に血液透析を施行し, 種々の問題点を経験した. 対象は, (1) 46歳男 (2) 49歳女 (3) 48歳女 (4) 37歳女 (5) 69歳男 (6) 51歳女の計6例である. 全例ステロイド抵抗性のネフローゼ症候群を呈し, 入院時既に低血圧, 心電図異常, 肝機能異常等の他臓器合併症を示す例が多かった. 腎生検で全例アミロイドーシスと確定診断した. 1例は膀胱癌に併発した続発性アミロイドーシスで, 5例は原発性アミロイドーシスであった. 浮腫出現から血液透析開始までの期間は1年から2年3か月であった. また乏尿から心不全に至る過程が急速であるため, 血清クレアチニン値が著明には上昇していないにもかかわらず, 緊急透析を必要とした. 導入時の血清クレアチニン値は1例で8.4mg/dlであったが他は6.6mg/dl以下であった. 内シャント造設は不良で, 4例は外シャントによる導入となった. 1回の手術で内シャント造設に成功した2例もシャントの発達は悪かった. 透析中に肝障害, 心筋障害, 心伝導系障害, 消化器障害 (特に食思不振) 低血圧等の他臓器合併症があり, 患者の一般状態を悪化させ透析療法の効果を阻害した. 中でも維持透析中の最大の問題点は低血圧症であった. 透析中に血圧が低いまま経過する例が3例あった. 残りの例でも透析中の突然の血圧低下が他の腎不全患者よりしばしば見られた. また透析終了直前よりも返血後に血圧が低下する例が2例あり, 血圧調節機構の何らかの異常が考えられた. 6例中5例は死亡しており, 透析療法開始後の生存期間は10日から2年10か月に亘った. 死因はそれぞれ, 外シャント開放による自殺, 肝不全, 極度の食思不振による全身衰弱, アミロイドによる冠動脈閉塞が原因となった心筋梗塞, 心伝導系障害による急性心停止であった. 1例は生存中であるが, 低血圧で一般状態不良である. いずれにせよアミロイド腎症の透析療法にはさまざまな問題点があり, 更なる検討が必要であろう.