人工透析研究会会誌
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血液透析中における高張液注入と溶血について
清水 元一岡田上 茂山川 真
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1983 年 16 巻 4 号 p. 255-260

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抄録
我々の施設において血液透析中の不均衡症候群発生時の処置にはしばしば施行している50%糖液および10%食塩水注入時における溶血について検討を行った.
方法: 模擬血液回路を作製し, 牛血を循環させ, その回路に50%糖液20mlを60秒にて注入を行った. そして注入部位以後の血液回路の各部位における溶血率を測定した. また50%糖液および10%食塩水の10段階希釈溶液を作製した. この溶液300μlに患者全血50μlを加え, さらに生食3mlを加えた. そして各希釈溶液における溶血率と浸透圧を測定した. 次に血液透析中において50%糖液および10%食塩水20mlを血流量120ml/minの時に60秒で注入した場合と血流量180ml/min 30秒で注入した場合の溶血率の検討を行った.
結果: 模擬血液回路による検討では高張液注入部位下部が最も溶血発生率が高かった. また高張液浸透圧と溶血発生の検討では, 1,600mOsm/kg以上の高張液が注入されると溶血が発生し, 同浸透圧の高張液においては高張食塩水より高張糖液の方が溶血量は多かった. 透析中の検討においては, 血流量120ml/min各張液20mlを60秒にて注入した時の50%糖液の溶血率は0.37±0.14%, 10%食塩水は0.61±0.21%であった. 血流量180ml/min各高張液を60秒にて注入した時, 溶血率は50%糖液において1.34±0.60%, 10%食塩水は0.73±0.20%であった.
結論: 血液透析中の50%糖液および10%食塩水注入により少量であるが溶血を確認した. 溶血の程度は高張液の種類, 注入速度, 浸透圧および血流量によって影響を受け, 50%糖液と10%食塩水の比較において同一条件では糖液の方が溶血の程度は大である. そしてこれらの結果より透析中の高張液注入を頻回に行うことは貧血促進の1因子になることが推測された.
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© 社団法人 日本透析医学会
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