人工透析研究会会誌
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PSS (進行性全身性硬化症) による腎不全の透析看護例
伊藤 泰子武智 喜代子田中 千恵子鈴木 ちひさ鈴木 智子篠崎 秀子斎間 恵樹酒瀬川 裕中村 雄二松尾 史朗横張 龍一
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キーワード: 血液透析, 単腎
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1984 年 17 巻 1 号 p. 67-70

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抄録
進行性全身性硬化症 (PSS) により発病して3ヵ月後に腎不全に陥り透析に導入. 種々の合併症を併発したが, 10ヵ月経過した現在, 合併症もなく順調に透析を継続している症例を経験したので報告する.
症例は42歳女性. 17歳時左腎結核にて腎摘出術を受け, 昭和57年7月浮腫, 倦怠感, 微熱および四肢硬化出現. 膠原病の疑いにて8月31日入院. 中手骨関節より近位の皮膚硬化, 両側下肺野の肺線維症, 手指の硬化および消化管障害あり, 皮膚生検でもPSSの組織所見を認め, 本症と診断された. 10月24日心嚢液貯留による呼吸困難が出現. 10月29日BUN 144mg/dl, Cr 9.3mg/dlとなり10月30日シャルドンカテーテルにて血液透析に導入した. 一時期消化管出血を認めたが, 現在合併症もなく, 週3回5時間透析を継続している.
看護の経過としては, 原疾患の急速な進行に加えて長期にわたる消化管出血, 心外膜炎による呼吸困難, 発熱と種々の合併症を認め, また原疾患に対する不安感もあり, 患者は長期にわたり周囲に無関心となった. 医療行為にも拒否的態度をとり, 死を希望するなど抑うつ状態が続いた. これに対し, 合併症の防止, 精神面での看護を目標にあげ, 接する時間を多くし, 家族の協力を求め, また具体的な看護ケアーを通してより良い人間関係を保てるようにした. 症状の改善とともに, 会話や要求が多くなり, リハビリテーションを希望するなど前向きの姿勢が見られるようになった.
今後さらに合併症の予防に留意し, 長期生存例を目ざして安全な透析を続けていきたい.
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© 社団法人 日本透析医学会
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