人工透析研究会会誌
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慢性腎不全透析症例におけるHbA1値 (第1報)
糖尿病性腎症における透析療法の影響
野村 佳成南條 輝志男宮野 元成坂本 健一岡井 一彦曽和 亮一栗山 茂司菊岡 弘芳里神 永一木村 茂古田 浩二宮村 敬
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1984 年 17 巻 3 号 p. 153-158

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抄録
我々は糖尿病性細小血管障害の末期状態である糖尿病性腎不全症例においてHbA1値を測定し, Macro column法やチオバルビツール酸法による検索を加えることにより腎不全状態ならびに透析療法がHbA1に及ぼす影響について検討を行った. 対象は, I群, 慢性透析患者 (糖尿病性) 31名, II群, 糖尿病性腎不全患者 (非透析) 10名, III群, 腎障害のない糖尿病患者46名, IV群, 慢性透析患者 (非糖尿病性) 22名, V群, 正常者17名で, I, IV群では透析開始前 (すなわち朝食後2時間) と透析終了時に, II, III, V群では朝食後2時間に採血した.
その結果, 以下のことが判明した. 1) 透析群 (I, IV群) の方が非透析群 (III, V群) に比し血糖値が同程度であるにもかかわらずHbA1は低値で, その傾向は糖尿病群でより一層著明であった. 2) 腎不全状態はHbA1値を低下させ, 長期透析患者のHbA1値はさらに低値であった. 3) 1回の透析過程はHbA1値やHbの溶出像に影響を及ぼさなかった. 4) HbA1c/HbA1a+b+cの比率は同程度のHbA1a+b+c値を示す非透析患者 (III, V群) に比し透析患者 (I, IV群) で低値を示した. 5) 糖尿病群においてHbA1 高値域 (すなわち血糖高値域) では透析群 (I群) の方が非透析群 (III群) に比し, そのglycosylationの度合が過大評価されている.
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© 社団法人 日本透析医学会
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