人工透析研究会会誌
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腎不全患者に併発した血液凝固異常の臨床的検討
II. 抗生物質投与の影響について
木嶋 祥麿小沢 潔仲山 勲東海林 隆男笹岡 拓雄
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1984 年 17 巻 3 号 p. 165-171

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抄録
透析を受けている患者では経過中にいろいろな合併症が併発するが, 感染症は頻度も高くしばしば感染巣が不明で, 敗血症にいたる例も多い. そのため抗生物質の投与も必要となり, ときに長期にわたることもあるので, 副作用には十分な注意が必要である.
末期腎不全患者の出血性素因はよく知られている. また抗生物質の半減期が延長するためいろいろな副作用も出やすく, その1つとしての出血症状は最近とくに注意が喚起されているところである.
われわれは急性および慢性腎不全の患者10例において, 低プロトロンビン血症を伴う出血症状や顕著な血液凝固異常を経験したが, それがビタミンK剤の静注により改善したことから, ビタミンK欠乏症と診断した. 患者は高齢者が多く, 全例とも食事摂取量は極端に減少しており, かつ術後感染予防 (3例), 感染症 (5例), 不明熱 (2例) のため抗生物質が投与されていた.
抗生剤の単剤使用例は7例, うち6例がセフェム系, 1例がペニシリン系であった. 他の3例はセフェム系, アミノ配糖体系, テトラサイクリン系が同時に併用投与されていた. 出血症状の発症までの期間は4-10日という比較的短い例もあった.
低プロトロンビン血症の原因としてmethylthiotetrazole側鎖をもつ抗生剤が注目されているが, われわれの例ではこの側鎖をもつCMZ, LMOXが3例 (いずれも1剤投与) に使用されていた. しかし7例にはこれを持たない抗生物質が投与されていた. したがって抗生剤の種類だけでなく, 食事量減少などの背景的因子とともに腎不全に伴う代謝障害がきわめて重要と考えられる. ビタミンK欠乏性出血症と播種性血管内凝固症候群はいずれも重症疾患に併発するため, 十分な鑑別と早期の治療が必須である.
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© 社団法人 日本透析医学会
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