人工透析研究会会誌
Online ISSN : 1884-6203
Print ISSN : 0288-7045
ISSN-L : 0288-7045
重曹透析における透析液HCO3-濃度の症例別による検討
平山 克己辻 英昭村上 真一山崎 俊生中島 健一雨宮 時夫野本 晴夫稲田 俊雄
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 17 巻 3 号 p. 193-197

詳細
抄録
目的: 重曹透析は酸塩基平衡の改善が確実で, 無症状透析が可能であるといわれているが, 同一の透析液HCO3-濃度 (以下 〔HCO3-〕 D) で行った場合, 過剰なアルカリ化のためと思われる頭痛を訴えたり, あるいは酸塩基平衡の改善に相当な個人差がでるのを経験している. そこで今回我々は, 〔HCO3-〕 Dの測定法を検討した上で, 重曹透析において各症例に適した 〔HCO3-〕 Dについて血液ガスおよび臨床症状の面より検討した.
対象・方法: 透析困難症やacetate不耐症と思われる11症例に対し, 個人用透析装置にbicarbonate-infucerを組合せて用いた. 透析液はAK-Solita Cである. 〔HCO3-〕 Dを23, 26, 29mEq/lの3種類に調整した. まず標準濃度を26mEq/lで行い, 血液ガスの改善が過剰で頭痛を訴えた1症例は23mEq/lに下げ, また改善が不十分な1症例は29mEq/lに上げた.
結果・考察: 11症例中9症例は 〔HCO3-〕 D 26mEq/lで臨床症状と血液ガスはともに十分な改善が認められた. しかし, 1症例は 〔HCO3-〕 D 26mEq/lでは透析後pH 7.52, HCO3- 25mEq/lとアルカリ化への傾斜が高く, 透析中に頭痛を訴えた. そこで 〔HCO3-〕 D 23mEq/lに下げたところpH 7.35±0.022→7.43±0.023, HCO3- 20.28±1.16→22.6±0.49mEq/lと過剰傾向が是正され頭痛は軽減した. 一方, 26mEq/lではpH 7.27±0.018→7.39±0.014, HCO3- 16.0±1.67→20.6±0.80mEq/lと改善が不十分な1症例は 〔HCO3-〕 D 29mEq/lに上げたところ, pH 7.29±0.017→7.44±0.015, HCO3- 18.9±1.55→25.0±1.06mEq/lと好結果が得られた. なお, 〔HCO3-〕 Dの測定法に関してはpHとPco2より脳脊髄液のPK´・Sを用いてHenderson-Hasselbalchの式より求めたHCO3-値と, total CO2より求めたHCO3-値とは良好な相関 (r=0.961) が得られた. 以上の結果より, 重曹透析を行う場合, 個々の症例に合った 〔HCO3-〕 D濃度の処方が必要であると思われた.
著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top