抄録
血液透析患者においては赤血球変形能が低下していることが知られており, これが溶血亢進にも関与すると考えられることから, 変形能といくつかの因子との関連性について検討した.
血液透析患者において, 赤血球変形能は加齢とともに低下する傾向がみられ, 50歳以上と未満の2群に分けて観察すると, 50歳以上では50歳未満の最低値よりも全例が低値を示していた. 赤血球あたりのATP, 2, 3-DPG濃度は透析患者で健常人より高値を示していたが, 赤血球変形能との間に一定の関係はみられなかった. 血漿フィブリノーゲン濃度が高い例ほど赤血球変形能は低下する傾向がみられ, 50歳以上の例では50歳未満の例に比し, 高値傾向にあった. 血液pH値が低い例では赤血球変形能は低下する傾向がみられた. ADP, コラーゲン, エピネフリンによる血小板凝集能のうち, ADPによる凝集率が高い例では赤血球変形能は低下する傾向がみられた. エピネフリン, コラーゲンについては50歳未満の群ではいずれも凝集率が高くなるにつれて変形能は低くなっているのに対し, 50歳以上の群では逆の傾向を示し, 全体としては一定の傾向はみられなかった.
以上をまとめると, 赤血球変形能に影響を与える因子としては加齢, 血漿フィブリノーゲン濃度, pHおよびADPなどが考えられたが, 年齢により変形能に明らかな差がみられたことから, 加齢による影響が大きいと考えられた.