糖尿病性腎不全透析症例におけるglycosylated hemoglobinを, mini-column法, macro-column法, チオバルビツール酸法により検索し第1報において報告したが, 今回は非糖尿病性慢性腎不全透析症例のHbA
1値についてイオン交換樹脂を用いた高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法により検討を加えた.
非糖尿病性慢性腎不全透析症例 (HD群) 32名と健常者 (N群) 22名においてHPLC法によりHbA
1a+b, HbA
1c分画測定を行い, HbA
1a+b/HbA
1, HbA
1c/HbA
1各ratioを算出した. また, HD群において血糖 (PG), 尿素窒素 (BUN), クレアチニン (Cr), 尿酸 (UA) の各値を測定し, HbA
1値と同時採血した各値, ならびに各々の過去1ヵ月間 (3-4回測定) の透析前後における測定平均値とHbA
1a+bまたはHbA
1c値との相関性を調べた.
その結果, N群に比しHD群の方がHbA
1a+b値, HbA
1a+b/HbA
1 ratioは有意の高値 (p<0.001), HbA
1c値, HbA
1c/HbA
1 ratioは有意の低値 (p<0.001) であった. また, HbA
1a+b/HbA
1, HbA
1c/HbA
1各ratioは透析前後において差異は認められなかった. 一方, HbA
1a+b, HbA
1c値とPG, Cr, UA各値との間に相関性は認められなかったが, 同時採血したBUN値とHbA
1a+b値 (p<0.05), ならびに過去1ヵ月間の透析前後の平均BUN値とHbA
1c値 (p<0.01) との間には有意の正の相関関係が認められた.
したがって, HD群ではN群に比しHbA
1値におけるHbA
1a+b分画の占める割合は大であり, HbA
1a+b, HbA
1c値とBUN値との間に有意の正の相関関係が認められたことより腎不全透析症例において腎不全状態がHbA
1a+b, HbA
1c値に影響を及ぼしていることが示唆された. 以上より, 慢性腎不全透析症例におけるHbA
1値の評価にあたっては十分な配慮が必要であると考える.
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