人工透析研究会会誌
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17 巻, 4 号
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  • 栗原 怜, 北田 博久, 福田 喜裕, 杉下 尚康, 立石 圭太, 谷 吉雄, 由利 健久, 石川 勲, 篠田 晤, 鈴木 志寿子
    1984 年 17 巻 4 号 p. 229-234
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    シャント血栓症に対する抗血小板剤dipyridamole (150-300mg/day) とticlopldine (200-300mg/day) の効果を, E-PTFE graft 36例, 外シャント42例につきretrospectiveに検討した. さらに安定期透析患者27名 (慢性腎炎22例, 糖尿病性腎症4例, 慢性腎盂腎炎1例) を対象に血小板凝集能, β-thromboglobulin (β-TG), 血小板第4因子 (PF 4) に及ぼす抗血小板剤投与の影響を検討した.
    E-PTFE graft血栓除去と吻合部再建の合計頻度は, 未投与期1回/8.9ヵ月, dipyridamole投与期1回/8.6ヵ月, ticlopidine投与期1回/8.4ヵ月であり, 3期間に差を見い出せなかった. これはgraftの開存に関与している因子が複雑であること, 閉塞頻度の高い症例に積極的な抗血小板剤投与を行っていた傾向があったことなどから, 抗血小板剤の効果が現れにくかったためと考えられた.
    外シャントdeclotting頻度は, 未投与群およびdipyridamole投与群に対しticlopidine投与群で有意に低く, ticlopidineは外シャント血栓症予防に有効と考えられた.
    血液透析前から後にかけて血漿β-TGおよびPF 4値は, 未投与期, dipyridamole投与期で有意の上昇を示したが, ticlopidine投与期では透析前後に有意な差がなく, 著明に透析後の上昇が抑制されていた. このことは, 同剤投与期にADP添加による血小板凝集能最大凝集率が著明に抑制されていたことにも関連性があると考えられた.
    以上のことから, 抗血小板剤としてのticlopidineは, 血液透析中の血小板の凝集ないし崩壊を著明に抑制していると考えられ, シャント血栓症予防の目的に加え, 透析中の血小板活性化抑制の目的にも使用されうる薬剤と考えられる.
  • 澤田 重樹, 阿部 親司, 高橋 洋一, 古田 昭春, 大橋 宏重, 飯田 久也
    1984 年 17 巻 4 号 p. 235-241
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者では, 高トリグリセリド (TG) 血症を中心とした脂質代謝異常が報告されており, 健常者に対して, 心・血管系合併症の発生頻度の高いことが知られている. 今回, これら慢性血液透析患者の血清脂質, とくに血清リン脂質分画の変動につき検討を加え, 本症における脂質代謝異常を血清リン脂質分画の面から, 解析を試みた.
    対象は平均年齢41.3歳の健常者18名と, 週3回血液透析治療を受けている平均年齢46.7歳の慢性血液透析患者 (慢性糸球体腎炎) 55名である. 健常者の採血は早朝空腹時に, 慢性血液透析患者は前回透析から48時間以上経過した次回透析前の空腹時に行った. 総コレステロール (TC), リン脂質 (PL), TGは酵素法, HDL-コレステロール (HDL-C) はデキストラン硫酸-Mg法, リン脂質分画は薄層クロマトグラフィー法, インスリンはセファデックス固相法により測定した.
    健常者に対して慢性血液透析患者では, TC, HDL-C値は低く, TGは高値を示した. また, 慢性血液透析患者のうち, TGが150mg/dl以上の高値を示したものは40.0%で, HDL-C値との間にr=-0.40の負の相関が認められた. しかしながら, TG値とIRI値の間に相関は認められなかった. 慢性血液透析患者のリン脂質分画は, 健常者に対して, リゾレシチン, スフィンゴミエリンの比が増加し, レシチンの比と絶体量が減少した. また, 慢性血液透析患者のうち, 透析前の血清クレアチニン (Scr) 値が10mg/dl以上の患者では, リゾレシチンの絶体量がScr 10mg/dl以下の患者に対して増加する傾向にあった.
  • 千葉 栄市, 大庭 志摩子, 野呂 文江, 菅原 剛太郎
    1984 年 17 巻 4 号 p. 243-251
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    我々は慢性血液透析症例のCa代謝異常の是正と骨異栄養症の予防, 治療のために, Ca濃度6.0mg/dl透析液を使用し, 1α-hydroxycholecalciferol (1α-OH-D3) を投与する方法を施行している.
    しかし, これらの治療法に抵抗する高PTH血症と1α-OH-D3高感受性症例が認められた. これらの症例をgroup I (高PTH血症), group II (高PTH血症+1α-OH-D3高感受性), group III (1α-OH-D3高感受性) に分類し, histamine H2 receptor antagonistであるcimetidineの投与を試みた. cimetldineは400mg/day経口投与とした.
    Group I (3例): cimetidine投与によりPTHは症例1で8.31ng/mlから2.45ng/mlへ, 症例2で7.76ng/mlから3.14ng/mlへ, 症例3で7.81ng/mlから4.81ng/mlへと下降を認めた.
    T-Ca, Ca++, P, AI-P, 1α-OH-D3投与量には変化は認められなかった. MCI, BMC/BWに関しては, 2例に骨塩量の増加もしくは骨塩量の半減期の延長を認めた.
    Group II (1例): cimetidine投与によりPTHは17.66ng/mlから6.33ng/mlへと下降し, 1α-OH-D3投与量も0.5γ/dayから2.0γ/dayへと増量安定投与が可能であった. 骨痛は消失し自立歩行が可能となった. しかしMCI, BMC/BWの減少は防止し得なかった.
    Group III (4例): cimetidine投与により1α-OH-D3の投与量は, 症例1で0.5γ/dayから3.0γ/dayへ, 症例2で0γ/dayから1.5γ/dayへ, 症例3で0γ/dayから3.0γ/dayへ, 症例4で1.0γ/dayから2.0γ/dayへと増量安定投与が可能となった. 症例3, 症例4では骨痛も消失し自立歩行が可能となった. MCI, BMC/BWも2例に増加を認めた.
  • 慢性腎不全透析例におけるHbA1値の評価
    野村 佳成, 南條 輝志男, 宮野 元成, 坂本 健一, 岡井 一彦, 曽和 亮一, 栗山 茂司, 山本 康久, 古田 浩二, 宮村 敬, ...
    1984 年 17 巻 4 号 p. 253-256
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎不全透析症例におけるglycosylated hemoglobinを, mini-column法, macro-column法, チオバルビツール酸法により検索し第1報において報告したが, 今回は非糖尿病性慢性腎不全透析症例のHbA1値についてイオン交換樹脂を用いた高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法により検討を加えた.
    非糖尿病性慢性腎不全透析症例 (HD群) 32名と健常者 (N群) 22名においてHPLC法によりHbA1a+b, HbA1c分画測定を行い, HbA1a+b/HbA1, HbA1c/HbA1各ratioを算出した. また, HD群において血糖 (PG), 尿素窒素 (BUN), クレアチニン (Cr), 尿酸 (UA) の各値を測定し, HbA1値と同時採血した各値, ならびに各々の過去1ヵ月間 (3-4回測定) の透析前後における測定平均値とHbA1a+bまたはHbA1c値との相関性を調べた.
    その結果, N群に比しHD群の方がHbA1a+b値, HbA1a+b/HbA1 ratioは有意の高値 (p<0.001), HbA1c値, HbA1c/HbA1 ratioは有意の低値 (p<0.001) であった. また, HbA1a+b/HbA1, HbA1c/HbA1各ratioは透析前後において差異は認められなかった. 一方, HbA1a+b, HbA1c値とPG, Cr, UA各値との間に相関性は認められなかったが, 同時採血したBUN値とHbA1a+b値 (p<0.05), ならびに過去1ヵ月間の透析前後の平均BUN値とHbA1c値 (p<0.01) との間には有意の正の相関関係が認められた.
    したがって, HD群ではN群に比しHbA1値におけるHbA1a+b分画の占める割合は大であり, HbA1a+b, HbA1c値とBUN値との間に有意の正の相関関係が認められたことより腎不全透析症例において腎不全状態がHbA1a+b, HbA1c値に影響を及ぼしていることが示唆された. 以上より, 慢性腎不全透析症例におけるHbA1値の評価にあたっては十分な配慮が必要であると考える.
  • 西谷 博, 水谷 洋子, 山川 真, 西沢 良記, 森井 浩世, 佐藤 隆夫, 前田 光代, 橋本 重夫
    1984 年 17 巻 4 号 p. 257-262
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    薬剤の多用により誘発されたと考えられるミオグロビン尿性急性腎不全症例1例をCAPDで治療し良好な回復を得た.
    症例は52歳の糖尿病をもつ男性で, 持続性下肢痛のために薬剤を多用し筋脱力と乏尿を来した. 入院時高度の全身浮腫と筋力低下が認められ, BUN 119mg/dl, 血清クレアチニン15.6mg/dl, カリウム4.9mEq/l, CPK 7,726mIU/ml, 尿ミオグロビン1,000ng/ml以上であった. 入院後6日間はIPDによる治療を行ったが改善が不十分であったため, 7日目よりCAPDによる治療に変更した. CAPD開始後すぐに尿量が増加し, 尿ミオグロビンも200ng/mlに減少した. 腎機能所見, 血中横紋筋逸脱酵素値も順調に改善し, CAPD開始後29日目に尿ミオグロビンが消失, 血中横紋筋逸脱酵素が正常化し, 腎機能検査所見もほぼ正常化した. 腎機能検査所見の改善に伴い透析液交換回数を減少させたが病状に悪化はみられず44日目にCAPDを離脱した. 退院時は, BUN 22.5mg/dl, 血清クレアチニン1.7mg/dl, クレアチニンクリアランス62.9ml/min, 筋力および活動能力は正常であった. CAPD期間中の血糖コントロールは良好で, 腹膜炎の発生や血清総蛋白質の減少はみられなかった.
    CAPDは血液透析に比較して, 中分子量から大分子量物質の血液浄化性に優れ, また治療器具による身体拘束や不均衡症候群がなく, 血液凝固阻止剤が不要のため出血の危険が少ない. 本症例のごとくカタボリズムの強くないミオグロビン尿性急性腎不全症例の治療にCAPDを用いれば, ミオグロビンや神経障害性の強い中分子量尿毒物質のより積極的な除去が期待でき, さらに運動機能の回復を目的としたリハビリテーションの実施がより安全かつ容易になると考えられた. またCAPDは, IPDと比較しても方法が単純で長期間の治療に適している. 以上の理由より, CAPDはミオグロビン尿性急性腎不全の治療上有用な方法であると考えられた.
  • 長谷川 弘一, 小田 初夫, 門奈 丈之, 松下 義樹, 井上 隆, 森井 浩世
    1984 年 17 巻 4 号 p. 263-269
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者の視床下部-下垂体後葉系の機能をみるために, 健常人10例, 食餌療法中の慢性腎不全患者14例, 血液透析中の慢性腎不全患者18例の血漿ADHをラジオイムノアッセイを用いて測定した. ADH値は慢性腎不全患者の2群では健常人に比して有意に高く, また食餌療法中の患者よりも血液透析中の患者において有意に高値を示した.
    食餌療法中の患者においては, 血漿ADHと血清クレアチニン, 血漿ADHと有効血漿浸透圧との間に, 有意な正の相関関係をみた. また血漿ADHと血清Caとの間にも有意な負の相関関係をみた.
    血液透析中の患者においては, 血漿ADH値は透析後, 透析前に比して有意に低下した. 透析前後とも, 血漿ADHと有効血漿浸透圧との間には有意な正の相関関係をみた. しかし血漿ADHと血清Ca, 血漿ADHとPRA, 血漿ADHとMBPとの間には相関はなかった. また血液透析による血漿ADHの変化と体重の変化についても相関はなかった.
    これらの結果よりみて慢性腎不全患者においてADHの分泌は第一義的には有効血漿浸透圧によって調節されているとともに, ADHの不活性化については減少していることが考えられた.
  • 太田 道男, 山海 嘉之, 熊谷 頼明, 山内 真, 熊谷 頼篤, 鎌田 忠夫, 小路 良, 池辺 潤
    1984 年 17 巻 4 号 p. 271-275
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析中の患者の血圧降下やショックの予知のためのパラメータとして循環系の調節指標 (CRI) と心仕事率 (WH) を提案する.
    CRIは末梢における血圧の調節能と, 心における拍出量の調節能に関するものである. 心仕事率WHは, 総末梢抵抗をTPR, 心拍出量をCOとするとき, 末梢の消費するエネルギーとしてWH=TPR・(CO)2として与えられる. CRI, WHともに透析中に行われる血圧測定値から簡単に計算できるのが特徴であり, ショック予知のパラメータとして, 血圧降下との関連を検討した. 透析中血圧降下のない患者については, CRI, WHは高値に保たれ, 血圧降下の起る患者については, それに先立ってCRI, WHも降下する傾向が見られた. 透析中に血圧降下のおきた30件の例についてみると, CRIまたはWHが初期値の70%に降下してから血圧降下となるのは85%となった. したがって, 両者を併用すれば, 透析中のショック予知がますます確実になるものと期待される.
  • 西村 明子, 中山 美恵子, 福嶋 教代, 中本 マチ子, 川島 順子, 小倉 ヤス子, 平 トヨ子, 黒畑 功, 大上 洋子
    1984 年 17 巻 4 号 p. 277-281
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液凝固能に異常なく活動性の出血性疾患を有する慢性透析患者を対象とし, 市販されているダイアライザーのうち, KF-101® (EVAL膜) B2-150® (PMMA膜), C-DAK-3,500® (セルロース・アセテート膜) クプロファン膜のAM-10(H)®, ALF-10®, AM-20(T)®を用いて, 無抗凝固剤透析を試み肉眼的器内残血評価により適性を比較検討した. その結果, ファイバー内径が約200μmとほぼ等しいダイアライザーのうち, KF-101®, B2-150®, AM-10(H)®で一応の無抗凝固剤透析が可能であり, ALF-1®, C-DAK-3,500®ではヘパリンの減量とともに残血が著明であった. 一方, 内径が300μmであるAM-20(T)®では, 残血が極めて少なく長期間使用を試み, 出血頻度や輸血量の減少を認めた. 以上から, 市販のダイアライザーでは, 膜材質より内径その他の要素の方が無抗凝固剤透析の適性に重要であると考えられた. また, 長期無抗凝固剤透析は出血性疾患を有する患者に対し, 臨床的に有用であることを確認した.
  • 高瀬 弘行, 大橋 富美代, 徳岡 多加志, 笹倉 良一, 福永 秀行, 天野 昌彦, 生野 哲雄, 大西 清史
    1984 年 17 巻 4 号 p. 283-286
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者における動脈硬化, 特に脳血管障害や虚血性心疾患はその予後を考える上で重要な問題である. そこで我々は動脈硬化の非観血的診断法の1つである大動脈脈波速度 (PWV) の測定を血液透析患者に試みた.
    対象は透析群 (HD群) としては血液透析施行中の患者23名 (男15名, 女8名, 平均49歳) で, 糖尿病合併例は除外した. コントロール群 (C群) としては外来通院中の患者43名 (男28名, 女15名, 平均51歳) である. なお明らかに脳血管障害, 虚血性心疾患, 糖尿病を認めるものは除外した.
    方法は両群についてPWV, 総コレステロール (TC), 中性脂肪 (TG), 高比重リポ蛋白コレステロール (HDL-C) を測定して, HD群とC群の比較を行い, 併せて両群についてPWVと脂質, 年齢, 透析期間との関係についても検討を加えた.
    その結果, HD群はTC 181±38mg/dl (mean±SD), TG 153±85mg/dl, HDL-C 44±13mg/dlでC群はそれぞれTC 201±42mg/dl (NS), TG 112±54mg/dl (p<0.05), HDL-C 51±14mg/dl (p<0.05) であった. PWVはHD群, C群ともに年齢とは有意の正相関を認めたが, 両群の比較ではHD群8.4±2.0m/s, C群8.1±1.2m/sと有意差を認めなかった. また両群においてPWVとTC, TG, HDL-C, 透析期間との関係を検討したがいずれも有意な相関はみられなかった.
    以上の検討結果よりPWVを指標とした血液透析患者の動脈硬化度はC群と同様に年齢的変化が大きいものと考えられた.
  • 田川 和子, 中山 みどり, 田中 忍, 前田 絹枝, 吉野 保之
    1984 年 17 巻 4 号 p. 287-290
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎不全の根本治療として腎移植が挙げられているが, 拒絶反応によって再び血液透析 (HD) を受ける症例も少なくない. 今回, 我々は移植腎機能が廃絶したにもかかわらず, HDを拒否する患者に対して, 精神医学的側面からアプローチを試み, その結果HDを受容してきた症例を経験したので, 精神医学的看護における考察を加えて報告する.
    患者は29歳の女性で, である. 彼女は1978年5月腎不全と診断され同年8月HD導入となった. 1979年11月腎移植を行ったが1ヵ月後に十二指腸潰瘍穿孔の手術を受けた. その後経過は良好であったが, 移植後6ヵ月から慢性拒否反応を示し, 血漿交換等の治療を行ったが効果なく, 1982年4月不定期にHDを開始した. 患者はかたくなな態度で我々をよせつけようとせず, HDを強く拒否したため, 1982年6月CAPDを施行した. しかし1ヵ月後には腹膜炎を併発し中止した. 1982年11月, 患者の強い希望にて再びCAPDを施行したが, 腹痛, 出血, イレウスを併発し断念した. それでも患者は心を閉ざしたままHDを拒否しCAPDに固執した. 我々はHD拒否の原因を探ろうとするのではなく, 患者を温かく受容, 支持し, 人間的なふれあいをはかることからはじめていった. HDを開始して約6ヵ月後, 患者と我々の人間関係が良好になった時コミュニケーションが成立し, HD拒否の原因を把握した上でのアプローチにより患者は次第にHDを受容してきた. 我々は本症例を通じ, 精神医学的看護とは患者を人間として理解しようとすることからはじまり, それには卒直な人間同士としてのかかわりを求めること, そして患者側に立ったコミュニケーションを持つことが非常に大きな役割を占めることを再認識した.
  • 福島 敦子, 平山 順朗, 山谷 金光, 鈴木 唯司, 舟生 富寿
    1984 年 17 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 1984/08/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者においては赤血球変形能が低下していることが知られており, これが溶血亢進にも関与すると考えられることから, 変形能といくつかの因子との関連性について検討した.
    血液透析患者において, 赤血球変形能は加齢とともに低下する傾向がみられ, 50歳以上と未満の2群に分けて観察すると, 50歳以上では50歳未満の最低値よりも全例が低値を示していた. 赤血球あたりのATP, 2, 3-DPG濃度は透析患者で健常人より高値を示していたが, 赤血球変形能との間に一定の関係はみられなかった. 血漿フィブリノーゲン濃度が高い例ほど赤血球変形能は低下する傾向がみられ, 50歳以上の例では50歳未満の例に比し, 高値傾向にあった. 血液pH値が低い例では赤血球変形能は低下する傾向がみられた. ADP, コラーゲン, エピネフリンによる血小板凝集能のうち, ADPによる凝集率が高い例では赤血球変形能は低下する傾向がみられた. エピネフリン, コラーゲンについては50歳未満の群ではいずれも凝集率が高くなるにつれて変形能は低くなっているのに対し, 50歳以上の群では逆の傾向を示し, 全体としては一定の傾向はみられなかった.
    以上をまとめると, 赤血球変形能に影響を与える因子としては加齢, 血漿フィブリノーゲン濃度, pHおよびADPなどが考えられたが, 年齢により変形能に明らかな差がみられたことから, 加齢による影響が大きいと考えられた.
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