人工透析研究会会誌
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10年以上の長期透析生存例の検討と副甲状腺摘出術および手根管症候群
鈴木 正司今井 久弥高橋 幸雄酒井 信治上村 旭湯浅 保子薄田 芳丸出口 隆志駒場 明高野 清平沢 由平清水 武昭森田 俊村岡 幹夫
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1984 年 17 巻 5 号 p. 379-386

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抄録
昭和41年1月から48年12月末日までに透析治療を開始した288名について検討した. 死亡例108名, 他施設への転医例64名であったため, 当院および関連施設での生存例は111名であった. 転医例を除いて計算した生存率は5年60.7%, 10年53.9%, 10年以上46.1%であった.
死因では心不全が25.0%で最も多く, 次いで脳血管損傷15.7%, 敗血症12.0%, 心外膜炎11.1%, 肝炎9.3%などが主要なものであった. 心外膜炎や敗血症による死亡例は, 5年および10年以降ではまったく発生していないが, 心不全, 脳血管損傷による死亡は10年以降ではむしろ相対的に増加している.
生存例の合併症の種類では, 心不全や肺うっ血は次第に減少し, 肝炎・肝障害, 心外膜炎の発生も同様であった. Blood access感染は少ずしも皆無にはならず, 重症呼吸器感染症も減少してはいない. ヘルペス感染症, 尿路結石症, 女性化乳房なども注目すべき合併症であった.
副甲状腺摘出例の19症例では, 透析歴8年2ヵ月-15年3ヵ月で平均10年10ヵ月であった. 我々の経験では10年以上の透析歴を有する例の12%が手術を受けたことになる.
手根管症候群は57名の当院での10年以上の生存例中で15名 (26.3%) に認められた. この比率は5年未満の95名中10名 (10.5%), 5年以上10年未満の64名中12名 (18.8%) から見て, 明らかに漸増傾向があった. 透析歴12年以上の8症例で手術を実施したところ, 病状は急速に改善した. 腱, 滑膜などの組織には全例で著しいアミロイド沈着を認めた. 同時に合併したバネ指の手術を受けた4例でも, アミロイド沈着が証明された.
10年以上の透析例では副甲状腺機能亢進症および手根管症候群の2つは, 特に注目すべき合併症と考えられる.
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© 社団法人 日本透析医学会
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