人工透析研究会会誌
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10年以上血液透析の患者の超音波診断による腎嚢胞形成様式とrenin-angiotensin-aldosterone (R-A-A) 系の考察
鈴木 好夫三浦 雅弘原 茂子葛原 敬八郎二瓶 宏三村 信英原 満
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1985 年 18 巻 3 号 p. 237-245

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抄録

当院における10年以上透析の患者33名について超音波診断法により腎の嚢胞形成を観察し, またこれら対象のうち低血圧をしめす症例にangiotensin II (A II) 注入テストを行い嚢胞形成とR-A-A系との関連を考察した. 超音波診断法で観察した33名中31名 (94%) に透析患者の萎縮腎に多嚢胞性変化が認められ, 嚢胞形成様式をI, II, III, IV, V型に分類した. すなわち腎長径が8-9cmで大型嚢胞 (直径1-3cm) で置換されたI型, 腎長径は6cm以下で大型嚢胞で置換されたII型, 同III, IVは腎長径は6cm以下と小さく前者は直径1cm以下の嚢胞が数個存在し, 後者には超音波診断法上嚢胞がみつからないもの. V型は左右で別の型を示すもの. I-V型の別と臨床生化学データおよび原疾患との関連はない. 透析前PRAは大型の嚢胞をもつグループA (I型とII型の和) の方が小さい嚢胞および嚢胞の見つからないグループB (III型とIV型の和) に比べ統計的に有意に高い (P<0.01). PRAの透析前後比はグループAがBよりも高い. すなわちrenin分泌に与える透析の影響はグループAの方が大きい. 型別分類とPACの間に関係はなかった. 33例中7例にWHO基準の低血圧症が存在し, この7例すべてが高resin, 高aldosterone血症であった. 透析前PRAは低血圧症例と他の正常圧および高血圧症例との間に差はないが, PRAの透析前後比は低血圧症例の方が明らかに高い. よって透析のresin分泌に与える影響は低血圧症例において大きいと考えられた. A II注入テストによるcritical doseは7例の低血圧症例全例で, 正常とされる30ng/kg/min以下より高く, 10年以上透析例の低血圧症例でのPRA高値は血管の低反応性の代償機序と考えられた. 低血圧症の発生例数が大型嚢胞のグループAと小さい嚢胞および嚢胞の見つからないグループBで同率であったため嚢胞形成がrenin分泌に関与するという直接の証明はえられなかった.

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