人工透析研究会会誌
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CAPD腹膜炎の2剖検例
中村 義弘石橋 賢一小倉 三津雄末永 松彦有輪 六朗
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キーワード: 腹膜炎, 腹腔内膿瘍
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1985 年 18 巻 3 号 p. 247-251

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抄録

症例1: 30歳, 男性. 基礎疾患は慢性糸球体腎炎. 昭和55年11月8日, CAPD開始. 順調に経過していたが, 昭和57年11月27日腹痛・排液混濁を認め入院. 入院時38.0℃の発熱, 腹部全体に圧痛と抵抗を認めた. 腹水は混濁し, 緑膿菌が検出された. 入院後, 自動腹膜灌流装置を用い, 感受性ある抗生薬による連続的洗浄を行ったが臨床的改善はえられず, 菌も消失しなかった. このためカテーテル抜去・再挿入に加え, 腹腔内膿瘍の存在を疑いGa-シンチ, 腹部超音波検査を試みたが膿瘍は確認できなかった. 以後も治療に反応せず敗血症状態となり, 12月23日死亡した. 剖検では, 肝横隔面に鶏卵大の膿瘍があり, 他の剖位にも多数の微小膿瘍が存在した. 直接死因は出血性細菌性心外膜炎による心タンポナーデと考えられた.
症例2: 55歳, 男性. 基礎疾患は慢性糸球体腎炎で昭和57年2月よりCAPD開始. 昭和58年8月15日, 腹痛・排液混濁出現し入院. 入院時, 腹部圧痛著明, 排液は混濁し, 黄色ブドウ球菌を検出. 感受性ある抗生薬を用いて連続洗浄を開始したが改善なく, カテーテル抜去し, 再挿入を行った. Ga-シンチでは膿瘍を確認できなかった. その後も治療に抵抗していたが, 11月12日, クモ膜下出血を併発して死亡. 剖検では腹腔内肝屈曲部に膿瘍が確認された.
CAPDに合併する腹膜炎は軽症であり, 重症・難治例は少ないとされているが, 治療に抵抗し重篤な経過をとるものも存在する. 我々の症例は2例とも腹腔内膿瘍を形成していたが, Ga-シンチ, 超音波検査では確認できなかった. 重症腹膜炎の合併においては腹腔内膿瘍の存在を常に念頭におき, 外科的腹膜炎に準じた, 観血的手段を含む, より積極的な対応も必要であると考えた.

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