1985 年 18 巻 3 号 p. 283-287
透析中にみられる血小板数の減少, 血小板第4因子の放出は透析による血小板の活性化を示唆する. 透析開始前にアスピリン1gを経口投与し, ヘパリンを抗凝固剤として定期的に重曹透析を受けている慢性腎不全患者25名を対象として, 透析中の血小板活性化がこのアスピリン投与で抑制されるのかどうかを血小板数, 平均血小板容積 (Baker 810), 血小板第4因子 (RIA法) を指標として検討した.
ヘパリンの血小板に対する影響をみる目的で健常人にヘパリン5,000u 1回静注した. 静注後血小板数は15分, 30分に減少した後60分で増加するのがみられた. 一方血小板第4因子は血小板数の変化とは対照的に, 静注後15分で著明に増加した後減少した. しかしアスピリン前処置後ヘパリン静注群では, 静注後の血小板第4因子の上昇が有意に抑制された. また平均血小板容積には有意の変化はみられなかった.
次に透析中の血小板活性化へのアスピリン併用効果をみた. 透析中の血小板数, 血小板第4因子の変化をみると開始15分で著明な血小板数の減少, 血小板第4因子の上昇がみられ, 透析中回路内での血小板活性化が強く起こっていることがわかった. しかしアスピリン前処置群でもこの血小板第4因子の上昇は全く抑制されなかった. また血小板活性化に伴い血小板回転の亢進が疑われたが, 透析中の平均血小板容積には有意の変化はみられなかった.
以上より透析中の血小板活性化には血液-透析膜表面の接触による相互作用の他に, ヘパリン自体の血小板活性化作用にもよることがわかった. またアスピリン1gの投与はヘパリンによる血小板活性化は抑制し得たが, 透析中の活性化は全く抑制しなかった.