人工透析研究会会誌
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透析液マグネシウム濃度の再検討
橋本 寛文筒井 信博今川 章夫
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1985 年 18 巻 3 号 p. 315-318

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抄録

血清マグネシウム (Mg) 濃度が高いと副甲状腺ホルモン (PTH) の分泌を抑制することより, 一般に透析液Mg濃度は1.5mEq/lと高く処方されている. しかし, 高Mg血症は末梢神経障害, 掻痒症などの原因ともなり, 可能であれば正常値に保つことが望ましい. 最近, 活性型ビタミンD 〔1α(OH)D3〕 製剤が使用され, 透析患者の低カルシウム (Ca) 血症は容易に補正されることから, 低Mg透析液 (Mg濃度0.5mEq/l) の有効性を検討した.
対象は慢性血液透析患者40例で, 3ヵ月間低Mg透析液を使用し, 血清Mg, 血清Ca, 血清リン (P), 血清副甲状腺ホルモンc末端 (c-PTH) 濃度の変動について検討した. 血清Mg濃度は低Mg透析液使用により, 2.59±0.53mEq/lから2.00±0.33mEq/lへと有意に低下した (p<0.01). 血清Ca, 血清P濃度は低Mg透析液使用前後で有意差を認めなかった. しかし, 血清c-PTH濃度は低Mg透析液使用により, 2.06±1.16ng/mlから2.75±1.86ng/mlへと有意に上昇した (p<0.02). また, 低Mg透析液使用により, 血清Mg濃度と血清c-PTH濃度の間には負の相関が得られた.
今後, 長期間の低Mg濃度透析液を使用するには, 血清Ca濃度の厳密な補正による血清c-PTH濃度の変動の観察, 他の方法によるPTH分泌抑制法の併用などについての検討が必要である.

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© 社団法人 日本透析医学会
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