日本透析療法学会雑誌
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慢性腎不全患者の血小板酵素に関する研究
加藤 禎一
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1986 年 19 巻 12 号 p. 1111-1123

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抄録
慢性腎不全患者の血液透析 (HD) 導入期にみられる出血傾向, 血小板凝集能の低下等の血小板異常はHDにより改善され, 維持透析患者ではこれらの異常は認め難い. しかし, HD患者では体外循環, 尿毒素等により血小板は少なからず影響を受けていると思われる. そこで, 維持透析患者の血小板に異常が存在するかどうかを研究するために, 血小板酵素活性を指標として用い検討を行った. 健常人 (34名), 維持透析期のHD患者 (30例) およびCAPD患者 (21例) を対象として, その血小板凝集能 (collagen 2μg/ml), Mg++-ATPaseとK+-EDTA ATPaseの酵素活性およびplatelet cyclo-oxygenase (PCO) 活性の指標となる血小板malondialdehyde (MDA) 産生能を測定し以下の成績を得た.
1) 血小板凝集能は3群間に差を認めなかった. 2) Mg++ ATPase活性は, 健常人7.0±1.3nmol Pi/mg protein/min, HD患者5.7±1.5nmol Pi/mg protein/min, CAPD患者6.2±1.7nmol Pi/mg protein/minであり, HDおよびCAPD患者は健常人に比して有意の低下を認めたが (HD: p<0.005, CAPD: p<0.05), 患者群間に差を認めなかった. 3) MDA産生能は, 健常人13.3±2.0nmol/109 platelets, HD患者8.3±2.0nmol/109 platelets, CAPD患者9.6±1.2nmol/109 plateletsであり, HDおよびCAPD患者は健常人に比して有意の低下を認めた (HD: p<0.001, CAPD: p<0.001). さらにHD患者はCAPD患者より有意に低値を示した (p<0.05). 4) K+-EDTA ATPase活性はMg++ ATPase活性に比して低値を示し, 3群間を比較できなかった.
以上の成績より, 慢性腎不全患者の血小板異常は血液浄化により改善されるが, 維持透析患者であっても臨床上見出し得ない血小板異常が存在することが示唆された. また, CAPDはHDに比して血小板に与える影響の少ない治療法であると推察された.
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