日本透析療法学会雑誌
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手根管症候群を呈した長期血液透析患者の2剖検例について 全身臓器へのアミロイド沈着について
小川 洋史斎藤 明原 一夫
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1986 年 19 巻 7 号 p. 733-738

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抄録
最近, 長期血液透析の合併症の1つとして, 手根管症候群が注目されている. その原因の1つにアミロイドが考えられているが, 屈筋支帯へのアミロイドの沈着が, 全身性アミロイドーシスの1症候なのか, 局所的な沈着であるのかは, 現在のところ解明されていない. 私どもは, 手術時に切除された屈筋支帯にアミロイドの沈着を認め, その後, 死亡し, 剖検において他の臓器にもアミロイドの沈着を認めた2症例を経験した. 2例とも, 続発性アミロイドーシスの原因となる疾患は認められなかった. したがって, 全身性アミロイドーシスが長期血液透析によってひきおこされ, 手根管症候群は全身性アミロイドーシスの1症状と考えられた. アミロイドは主に血管壁に沈着し, 全周性ではなく局所的に沈着しているのが認められ, 局所的に沈着することは, 長期血液透析に伴う全身性アミロイドーシスに特徴的な所見と考えられた. 今後, 長期透析患者の増多に伴い, 全身臓器へのアミロイド沈着は重大な問題となると思われる.
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