日本透析療法学会雑誌
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CAPD腹膜炎時の抗生剤投与法に関する検討
井上 徹阪口 勝彦吉田 寛二今井 哲也梶本 好輝白井 大禄
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キーワード: 腹膜炎, 腹腔内投与
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1986 年 19 巻 8 号 p. 803-807

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抄録

CAPD治療中に発生した腹膜炎は, 通常抗生剤を腹腔内投与して治療されるが, 投与された抗生剤の血中動態を考慮した至適投与法は確立していない. われわれは, latamoxef (LMOX) またはcefoperazone (CPZ) の腹腔投与により腹膜炎を治療して血中動態を検討し, 以下の結果を得た. 1) 投与量は0.25g/2lとし, 透析液交換ごとに反復して腹腔内投与したが, 初回投与で, 血中濃度はLMOXで平均10.4μg/ml, CPZは7.5μg/mlと上昇し, 早期に菌血症予防に十分なレベルに達した. 2) 連続投与中は, LMOXは平均43-46μg/mlという高い濃度に維持されたが, CPZでは肝疾患を有しない例では平均8-16μg/mlとLMOXに比し低く, 肝疾患合併例では25-47μg/mlと高かった. 投与中止後の血中濃度の低下もCPZはLMOXに比し迅速であった. 3) 以上の結果より, CPZはその排泄過程において肝の関与が大きく, そのため腎よりの排泄が期待できないCAPD患者では, LMOXとCPZの体内動態に差が出たものと考えられた. 4) 治療効果については, 両群とも有意差はなく, 5-6日で排液中白血球が10個/mm3以下となったが, ややCPZ投与群ではこの期間が長い傾向にあった.
CAPDにおける腹膜炎治療時には, 抗生剤がくりかえし投与されるため, その肝代謝率および腎排泄を考慮にいれて, 薬剤の選択および投与量の調節を行う必要があると考えられた.

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