日本透析療法学会雑誌
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適正体重維持のための食事指導
辰己 和子道下 恵子的場 崇子南部 清美佐々木 京子森口 直子
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キーワード: 食事療法, 長期透析, 肥満
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1986 年 19 巻 8 号 p. 809-812

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抄録

過食による肥満, カロリー不足によるるい痩を改善し, 適正な体重を維持できるように食事指導を検討した.
透析導入後1年以上の安定透析患者を対象に透析導入1年前, 導入後1ヵ月を経過し体内に貯留した余分な水分が除去され水分管理の安定した時期の体重, 導入1年後の体重を調査した. 結果, 保存療法期の厳しい食事制限のため導入1ヵ月後には体重が減少する者が多かったが, 導入1年後には徐々に体重が増加する者が増え, 標準体重を基準に考えてみると肥満患者の増加傾向がみられた. これは従来指導してきた熱量2,400kcal, 蛋白量90gの透析食に問題があると考えられた. そこで透析食をA食 (熱量2,400kcal, 蛋白量90gの高カロリー食), B食 (熱量1,600kcal, 蛋白量80g) に分け, A食を体重増加を目的としてるい痩患者へ, B食を減量を目的として肥満患者へ指導した. その結果, 指導1年後, A食指導群中, 体重増加を示した患者が43%, B食指導群中, 減量できた患者が45%であった. 標準体重に近づき得なかった患者は, 運動量が少ない, また理解力に欠けるため指示量が守れず減量できない症例と食事量を増やすよう指導しても食生活を変えられず, 摂取量が少なく体重増加しなかった症例であった.
そして, 指導に従い標準体重に近づき得た症例における栄養状態は, ほぼ満足できる値であり, コレステロール, トリグリセライドも正常範囲を維持していた.
透析導入後は, 単に高蛋白, 高カロリー食を指導するのではなく, 導入時より患者の肥満度, 年齢, 運動量などに応じた食事指導を継続して行い, 適正体重を維持するように指導することが望ましいと考える.

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© 社団法人 日本透析医学会
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