日本透析療法学会雑誌
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維持透析患者にみられた悪性腫瘍例の検討
二木 源宍戸 洋門間 弘道上田 仁田熊 淑男鈴木 一之北本 康則石崎 允高橋 寿三浦 一章岡崎 肇中村 克宏藤倉 良裕関野 宏深尾 彰浅木 茂
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1986 年 19 巻 8 号 p. 835-842

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抄録
1969年1月から1984年12月31日までに仙台社会保険病院腎センターおよび関連透析施設で透析導入した1,152名 (男性735名, 女性417名) を対象にして, 悪性腫瘍例を検討した. 発見された悪性腫瘍例数は46例 (4.0%) であり, 内訳は男性28例 (3.8%), 女性18例 (4.3%) であった. 罹患臓器は胃が13例と最も多く, 食道の3例, 大腸の6例を合わせ消化管が22例 (48%) を占めた. 他には甲状腺が7例 (15%), 膀胱, 子宮が各4例, 皮膚3例, 肝, 膵, 耳下腺, 乳房, 肺, 原発巣不明が各1例であった.
次いで維持透析患者にはたして悪性腫瘍が多発するのか否かを検討した. 対象患者における年齢階級別観察人年と, 宮城県における年齢階級別癌罹患率 (1973-1977年) とから対象患者の悪性腫瘍罹患の期待値を求めた. 期待値は男性で10.95, 女性で4.48であり, 罹患数と期待値の比はそれぞれ2.6, 4.0でともに有意差 (p<0.01) が認められた. その結果, 透析患者では一般人口と比較して悪性腫瘍の罹患頻度が高かった. 悪性腫瘍発見時までの透析歴は1年以内が9例 (20%) であったが, 5年以上の長期透析例も18例 (37%) あり, 平均3年11ヵ月であった. 46例中31例に対し外科的治療を行い, うち23例が生存していた. 術後生存者の平均生存期間は3年1ヵ月であり, 手術例の予後は比較的良好であった.
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© 社団法人 日本透析医学会
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