日本透析療法学会雑誌
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血液透析患者の高amylase血症に関する考察 amylase・creatinine clearanceを中心に
副島 昭典久野木 忠畑谷 重人高野 やよ子牛木 道子大河内 康光広瀬 康子小崎 正巳
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1986 年 19 巻 9 号 p. 893-897

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抄録

慢性血液透析患者にみられる高amylase血症の原因と, 血清amylase値が高値を示した場合の臨床的な意義をより明らかにしようとする目的で, 慢性腎不全非透析例と透析例の各々について, 血中amylase活性, 尿中amylase総排泄量, amylase・creatinine clearance比 (CAm/CCr) の測定を行った. その結果, 血清amylase値は腎機能の低下と一定の相関性をもって上昇し, creatinine clearance 20ml/min以下ではほとんどの例で異常な高値が認められた. また, 非透析腎不全例ではamylase clearanceとcreatinine clearanceの間に正の相関が認められ, amylaseの尿中排泄は腎機能に依存することが明らかであると考えられた. しかし, 透析例ではCAm/CCrは非透析例に較べて高値を示し, また尿量との比較でも無尿例でより血清amylaseが高いという傾向も認められなかった. これらのことは, 透析例では非透析例と比べてcreatinine clearance値が計算上極めて低い値となること, また透析例ではamylaseの異化が行われる代謝の過程に腎からの排泄以外に何らかの要因が介在するためであろうと推察された.
慢性血液透析患者の膵炎の診断には, 血清amylase活性の経時的な測定とisozymeの測定が重要で, CAm/CCrの高値は必ずしもその根拠になり得ない場合も多いと考えられた.

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