日本透析療法学会雑誌
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19 巻, 9 号
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  • 湯川 進, 谷岡 恒夫, 白井 大禄
    1986 年 19 巻 9 号 p. 849-853
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    末期慢性腎不全の34歳男性患者が, 右前腕に側々吻合で内シャントを形成されて約6ヵ月後より意識消失発作, 頭痛および狭心症様の胸痛発作を頻回に訴えた. これに対して, 抗てんかん剤を投与したところ意識消失発作は激減したが, 頭痛および胸痛には効果が認められなかった. 約1年後, 吻合部静脈瘤が巨大化傾向を示したので静脈瘤を除去し, さらに吻合を端々吻合に変更し, シャント量を減少させた. その結果, 抗てんかん剤投与中止にもかかわらず, 意識消失発作は発生せず, また頭痛および胸痛も訴えなくなった. 本症例はシャント量が多い場合には, 内シャントが脳循環に影響する可能性があることを示している.
  • 窪田 理裕, 久島 貞一, 伊藤 勇市, 高橋 康英, 原田 有三, 本間 英司
    1986 年 19 巻 9 号 p. 855-858
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性で, 1984年11月1日, 脳動脈瘤クリッピング術を受けた. 術後経過良好であったが, 2週間後に劇症肝炎を発症し呼吸不全, 心不全, 腎不全, 膵炎, DICを併発し, いわゆる複合臓器不全の状態に陥っていた. ただちにICUに収容し, 人工呼吸管理と血漿交換 (計13回), 活性炭灌流 (計10回), 血液透析 (計27回) を施行した結果, 徐々に回復傾向を示し, 17日後には抜管して自発呼吸となり, 40日後までに多臓器不全状態より脱し90日後に退院となった. また, 劇症肝炎と腎不全の合併に関し, エンドトキシン血漿との関連より若干の文献的考察を付け加えた.
  • 坂井 瑠実, 岩崎 卓夫, 永井 博之, 松本 昭英, 宮本 孝, 堀口 幸雄, 大植 春樹, 永井 徹郎, 内藤 秀宗, 江尻 一成, 申 ...
    1986 年 19 巻 9 号 p. 859-863
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    兵庫県下, 30施設での, 過去5年間の糖尿病性腎不全患者 (現在透析中の症例128名および死亡例112名) について, その合併症の頻度および死因との関係, また長期透析例の特異点につき, アンケートによる回答をもとに観察を試みた.
    現在透析症例において, 導入時の諸検査のうちBUN, クレアチニンについては5年以上の長期透析例にクレアチニン高値の傾向が認められた. また合併症においては高頻度に高血圧が認められ, 次いで心不全, 冠不全, 心包炎等であった. 透析期間別に分けて比較したが, 5年未満の群には特に合併症について特異的な傾向は認められなかったが, 5年以上の長期透析例では高血圧, 視力障害の合併例の少ない事が特異的であった.
    死亡例において, その死因として, まず心不全, 脳血管障害, 次いで感染症であるが, その他, 消化管出血, 悪液質が認められた, インスリン投与については5年以上の透析群で著減が認められ, 全例におけるインスリン使用群の生存率は非投与群に比して有意の低下が認められた.
    また透析導入の年齢と生存期間の関連は, 対象はいずれも40歳以上が多いが, 少数でにあるが40歳以下の比較的若い年齢層で, 生存期間の長期化傾向が認められるが, 40-70歳までの群との有意の差は認められなかった.
  • 並木 重隆, 三浦 克弥, 大塚 捷子, 束原 進, 畑 日出夫, 清水 信明, 木村 康, 熊谷 悦子, 加茂 悦爾, 武藤 巌
    1986 年 19 巻 9 号 p. 865-869
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者では結核の有病率は高く, その病像も肺外結核の増加や, 粟粒結核の多発などの質的変化がみられることが報告されている. 今回, 不明熱と腹水を認め腹腔鏡検査にて結核性腹膜炎と診断し得た透析症例を経験した.
    症例は55歳の男性. 結核の既往はなく, 50歳頃から慢性腎不全として加療, 52歳で血液透析導入. 入院3カ月前から食欲不振, 悪心, 嘔吐が出現した. 38℃台の発熱と腹水を認めた. 胸部レントゲン写真に異常なく, 腹部単純写真にて小腸ガスの増加がみられたが, 異常石灰化陰影は認められなかった. 貧血の増悪, 好中球増多, 血沈の亢進, CRP陽性を認めたが, 他の生化学検査は正常であった. 消化管精査にても特に原因病変なく, 腹部超音波およびCT検査にても, 腹水貯留以外に所見を認めなかった. 腹水穿刺液の性状は淡黄赤色, 浸出性でフィブリンの析出を認め, 細菌培養は陰性, 細胞診ではclass IIであった. 腹水の原因として癌性腹膜炎, 結核性腹膜炎などを疑い, 腹腔鏡検査を施行したところ, 腸管と壁側腹膜に粟粒大黄白色の小結節を多数認め, 線維性癒着を強く認めた. 結節部の生検にて類上皮細胞, 多核巨細胞からなる大小の肉芽腫を多数認め, 結核性腹膜炎と診断した.
    抗結核療法を開始し, 臨床症状は改善した. 4カ月後に施行した腹腔鏡検査では腹腔内小結節は消失し, ほぼ治癒状態にあることが確認された.
    透析患者にみられる原因不明の発熱, 腹水などの存在に対し, 肺外結核の診断並びに治療効果の判定に腹腔鏡検査は極めて有用な手段であると思われた.
  • 井上 聖士, 吾妻 真幸, 荘野 忠泰, 平林 俊明, 依藤 良一, 稲垣 王子, 森 頴太郎, 藤田 嘉一, 坂井 瑠実, 西岡 正登, ...
    1986 年 19 巻 9 号 p. 871-875
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者についてIntact PTHと2種類のC-PTHの相関からC-PTHの生物活性相当量を検討した. Intact PTHと2種のC-PTHの相関は良好で, Intact PTHの正常上限値は46-84 PTHの3.7ng/ml, 65-84 PTHの3.0ng/mlに相当した, すなわち慢性腎不全では46-84 PTHの約14%, 65-84 PTHの約33%が生物活性を有すると考えられた. 術前のC-PTH値と術後の経過からみてPTXの相対的, 絶対的適応は46-84 PTHで各々13.0, 26.0ng/ml以上, 65-84 PTHで10.0, 20.0ng/ml以上, Intact PTHで330, 600pg/ml以上と考えられた.
  • 秋山 敬, 村上 健治, 村本 弘明, 宮崎 良一, 紺井 一郎, 森河 浄, 黒田 満彦
    1986 年 19 巻 9 号 p. 877-884
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者の長期生存に好ましい要因と, その妨げとなる要因を探るため, 長期生存例と死亡例とを対比・検討した. 当施設で10年以上血液透析を受け生存中の23例 (長期生存群) の透析期間は平均11年6ヵ月 (10年4ヵ月-14年1ヵ月) であった. これらの症例の11年目の時点における生存率は54.0%であり, 生存例の3/4は社会復帰可能な状態にあった. 導入時の平均年齢は33±10歳, 基礎疾患の約78%が糸球体腎炎であった. 経過中, 血圧・心胸比 (CTR) などは正常範囲内に維持される例が多く, またBUN, クレアチニン, Htなども適当な管理範囲内にあった. 一方, いわゆる安定透析期に入って死亡した27例の死因は, 心不全9例, 脳血管障害5例, 感染症4例, 高K血症3例, 悪性腫瘍2例などであった. 心不全と脳血管障害とを合わせると死因の過半数を占めたので, この両者を合わせて心・脳死群とし, 長期生存群との対比・検討を進めた. 心・脳死群 (n=14) の透析導入時の年齢は53±14歳と生存群に比べ約20歳高齢であった. 腎不全の基礎疾患は, 生存群の3/4以上が慢性糸球体腎炎であったのに対し, 心・脳死群では腎硬化症が約半数を占めていた. 透析導入1年後の時点においては, CTRを除き, 両群で有意な差はなかった, しかし, 死亡6ヵ月前の時点では, CRTの増大, 高血圧, 血清アルブミン (Alb), トランスフェリン (Tf) の有意な低下などが認められた. また有意ではないが, 総コレステロール (Chol) の低値傾向が認められたが, 中性脂肪, HDL-cholには有意差を認めなかった. 透析患者の長期生存を妨げる主要な死因は, 心不全, 脳血管障害であり, この際, 老齢, 腎不全の基礎疾患のほか, CTRの増大, 高血圧, 血清Alb・Tfの低下, などが密接に関連する結果が得られた. 長期生存には, 血圧の管理のほか, 栄養状態の改善についても留意する必要があると考えられた.
  • 市川 晋一, 小浜 丈夫, 本郷 隆二, 高橋 悟, 山口 昭彦, 宮形 滋, 鈴木 隆志, 原田 忠
    1986 年 19 巻 9 号 p. 885-888
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全のため血液透析を行ってきた38歳の男性に, CAPD導入の際, 胸水貯留を合併した症例を経験したので報告する.
    CAPD導入11日目に右胸部痛を訴え, 胸部X線で著明な右胸水が認められた. 胸膜炎など他疾患を疑わせる所見はなかった. 腹腔と胸腔の交通を証明するために透析液に99mTcを混和し腹腔内に注入した. 3時間後の胸腹部スキャンで胸部に同位元素の取り込みが認められた. 1回透析液注入量を減量したら, 自覚症状も消失したため, 胸水貯留の状態で退院させ外来で経過観察している.
  • 山田 勤, 島野 ちか子, 中尾 一清, 松尾 武文
    1986 年 19 巻 9 号 p. 889-892
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    本邦におけるヘパリン依存性血小板減少症はまれな病態である. 今回我々は, 抗凝固剤としてヘパリン使用中の透析患者2例に本症の発生がみられたので, その発生機序と対策について若干の知見を得た. 症例1は糖尿病性腎症例で, ヘパリンによる透析中回路内凝血とDICの発現をみた. 本例はアスピリンの併用により, ヘパリンによる血小板減少をきたすことなく透析を続行することができた. 症例2は慢性腎不全例で, ヘパリンによる透析中回路内凝血が頻回に発生した. 本例ではヘパリンを中止してアスピリンとMD 805の併用による抗凝固療法で, 以後の透析は実施することができた. 2症例とも, Chongの方法により, ヘパリン依存性血小板抗体によると思われる血小板凝集反応が, 患者血清を用いるin vitroの検査で見出された.
  • 副島 昭典, 久野木 忠, 畑谷 重人, 高野 やよ子, 牛木 道子, 大河内 康光, 広瀬 康子, 小崎 正巳
    1986 年 19 巻 9 号 p. 893-897
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者にみられる高amylase血症の原因と, 血清amylase値が高値を示した場合の臨床的な意義をより明らかにしようとする目的で, 慢性腎不全非透析例と透析例の各々について, 血中amylase活性, 尿中amylase総排泄量, amylase・creatinine clearance比 (CAm/CCr) の測定を行った. その結果, 血清amylase値は腎機能の低下と一定の相関性をもって上昇し, creatinine clearance 20ml/min以下ではほとんどの例で異常な高値が認められた. また, 非透析腎不全例ではamylase clearanceとcreatinine clearanceの間に正の相関が認められ, amylaseの尿中排泄は腎機能に依存することが明らかであると考えられた. しかし, 透析例ではCAm/CCrは非透析例に較べて高値を示し, また尿量との比較でも無尿例でより血清amylaseが高いという傾向も認められなかった. これらのことは, 透析例では非透析例と比べてcreatinine clearance値が計算上極めて低い値となること, また透析例ではamylaseの異化が行われる代謝の過程に腎からの排泄以外に何らかの要因が介在するためであろうと推察された.
    慢性血液透析患者の膵炎の診断には, 血清amylase活性の経時的な測定とisozymeの測定が重要で, CAm/CCrの高値は必ずしもその根拠になり得ない場合も多いと考えられた.
  • 池谷 満, 米山 孝, 長瀬 光昌, 本田 西男, 金丸 光隆, 古橋 三義, 長嶋 悟, 金丸 英彦, 丸山 行孝
    1986 年 19 巻 9 号 p. 899-904
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者の貧血に対する蛋白透過性ダイアライザーの効果を知るべく, 8名の頻回輸血を要した透析患者を対象に上記ダイアライザー (主としてTAF15WU, 一部EL15C3を追加) による透析を約2ヵ月間施行した. この時の輸血間隔を, 同程度の小分子透過性を有する従来のダイアライザー (AM2000MまたはTAF15W) 使用時での輸血間隔と比較し, 蛋白透過性ダイアライザーによる貧血改善効果の有無を判定した. 対象患者8名中7名において蛋白透過性ダイアライザー使用により輸血間隔の延長が認められた. さらに, 経時的に測定された血中ハプトグロビン (以下Hapt) 値の中から, 輸血の影響が最も少ない輸血直前での値を選び, 従来のダイアライザー使用時および蛋白透過性ダイアライザー使用時との間で比較すると, 後者の使用により輸血間隔延長のみられた7例中6例でHapt値の上昇が確認された. 残り1例ではHapt値は常に測定感度 (1mg/dl) 以下であった. 次にこの上昇に対する溶血抑制関与の可能性を推測すべく, 上記貧血改善症例のうちの5症例において, Parpart法に準じた24時間37℃インキュベイト後の定量的赤血球浸透圧抵抗性試験を, TAF15WU使用時もしくはEL15C3追加使用時と, 従来のダイアライザー使用時とで施行し両者を比較した. 本検討により, 全例で蛋白透過性ダイアライザー使用時における赤血球脆弱性の低下が認められた. 以上より, 蛋白透過性ダイアライザーは透析患者の貧血に対し改善効果を有すると考えられる. その機序の1つとして, Hapt値の上昇および赤血球浸透圧抵抗性の増加より, 腎不全時の亢進した溶血の抑制が考えられた. また, 貧血の原因としてのuremic toxinが従来のダイアライザーでは透析されえない大きな分子領域にも分布している可能性が示唆された.
  • 心電図R-R間隔を指標として
    石原 哲, 前田 真一, 小林 覚, 清 正夫, 羽鳥 浩司, 鈴木 広明, 北島 和一, 春日 善男, 小林 克寿, 斉藤 昭弘, 西浦 ...
    1986 年 19 巻 9 号 p. 905-909
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者の自律神経障害を定量的に表現する方法として, 迷走神経の活動状態を反映するとされる, 安静時における心電図R波-R波間隔の変動係数 (CVR-R) を, 血液透析未実施の慢性腎不全患者19名 (CRF群), 血液透析患者 (糖尿病腎症によるものを除く, CRF・HD群) 140名, 糖尿病腎不全による血液透析患者 (CRF (DM)・HD群) 15名に対し計測した.
    これら各群のCVR-R (%) は順に, 2.60±0.85, 1.84±0.76, 1.23±0.49 (mean±SD) で, 健常者の4.45±2.32に比し有意に低値であった. CRF・HD群において, 透析中に血圧低下や狭心発作を呈しやすい症例では, さらにCVR-Rが低値であった. また, CVR-Rは加齢とともに低下したが, 血液透析の導入, 継続による一定の変動は見出せず, 腎移植生着例のみにおいて上昇傾向が見られた.
  • 飛田 美穂, 田坂 登美, 飯田 宜志, 北村 真, 黒川 順二, 平賀 聖悟, 佐藤 威, 中村 一賀, 竹内 正気
    1986 年 19 巻 9 号 p. 911-916
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    週3回の維持血液透析中の男性11名, 女性12名の合計23名を対象として, Desferrioxamine (DFO) を投与し, protein leak membraneによる血液透析 (PLHD), 血液濾過透析 (HDF) および血液濾過 (HF) を施行し, DFO-AlおよびDFO-Feの除去効率を調べるとともに, 骨痛を伴いAl負荷試験陽性症例, 貧血症例, 肝機能異常を伴う症例および末梢神経障害を有する症例に対する治療効果について検討した結果, 1) DFO-AlおよびDFO-FeはPLHD, HDFおよびHFの各治療により有効に除去された. 2) 骨痛を伴っていた9症例は全例骨痛の消失を認めた. 3) 貧血に対し改善を示した症例は11例で全症例の47.8%に改善効果があった. 4) 肝機能障害を伴っていた5症例中4症例 (80%) に改善効果を認めた. 5) 手足のシビレおよび筋力の低下を伴っていた2症例はともにシビレ感の消失と筋力の増加を認めた. 6) DFO投与による副作用は3症例 (13.0%) に悪心, 食思不振を軽度認めた以外にはなかった.
  • 小沢 裕子, 橋本 敏博, 丹羽 利充, 内藤 和行, 清水 潔, 柴田 昌雄, 山田 一正
    1986 年 19 巻 9 号 p. 917-922
    発行日: 1986/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫はその経過中に30-50%の割合で腎障害を合併する事が知られているが, 特にIgD型骨髄腫はBence-Jones蛋白を伴うことが多く腎不全の発現頻度が高いことが報告されている. この腎不全に対して今回我々は約8ヵ月透析維持し得た1例を経験したので報告する.
    症例は59歳の男性でめまい, 全身倦怠感を主訴として昭和59年9月当院へ入院した. 入院後血清および免疫電気泳動, 骨髄像, 尿中Bence-Jones蛋白などの出現よりIgD-λ型骨髄腫と診断しインターフェロン, 制がん剤などの投与を開始した. 一時病態は軽快したが昭和60年8月頃より消化器症状が増悪しBUN 59.0mg/dl, クレアチニン9.2mg/dlと上昇したため同年8月23日から週3回3時間ずつの血液透析に踏み切った. その後骨痛などに対して硬膜外ブロック施行などを行ったが比較的一般状態は安定していた. しかし本年4月初旬に入りDICを生じ重篤な凝固障害に陥り透析時にもFOY (gabexate mesilate) を使用するなど改善を試みたが4月30日死亡した.
    本症例の如くIgD型骨髄腫ではBence-Jones蛋白の合併例が多いことからこの蛋白により尿細管腔の閉塞, 尿細管の変性が生じ, いわゆるmyeloma kidneyの状態を呈すると考えられる. このような症例に対して人工透析を行ったことは有意義であったと思われる.
  • 1986 年 19 巻 9 号 p. e1-e2
    発行日: 1986年
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
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