日本透析療法学会雑誌
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透析患者の勃起機能と精巣機能
川西 泰夫今川 章夫平石 攻治黒川 一男
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キーワード: 透析患者, 勃起機能
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1987 年 20 巻 11 号 p. 851-854

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抄録
透析患者の勃起機能低下の原因の解明のために, 内分泌異常の関与について検討した. 内分泌検査としては, 血清testosterone値, 唾液中testosterone値, および血清LH, FSH, prolactin, sex hormone binding globulin値, 精巣容積の測定を行った.
血清testosterone値は透析患者では有意に低値を示した. 唾液中testosterone値はばらつきが大きかったが対照に比べ高値の傾向を示した. 血中LH, FSHは高値を示した. 血中prolactin値は, 50歳以上の群では対照と比べ差はなかった. 50歳未満の群では対照と比較し有意 (p<0.05) に高値であったが, 測定値は正常範囲の分布を示した. 精巣容積は透析患者では対照に比べ有意に (p<0.01) 低値を示した. sex hormone binding globulinは正常範囲にあった. 血清testosterone値とsex hormone binding globulinはy=13.0x-30.8の関係を示した. Free testasterone値とよい相関を示す唾液中のtestosterone値はむしろ高値であること. Sex hormone binding globulin値と血清総testosterone値が一次関数関係にあることより, 透析患者では, その血清総testosterone値はsex hormone binding globulinの濃度により高値をとったり低値をとったりするが, testosteroneの生物学的活性をもっfree testosteroneは少なくとも対照群に比べ低下はしていないと考えられる.
以上より透析患者の勃起機能低下の原因を精巣機能障害によるものと診断する根拠は認められず, 他の原因の検索が必要である.
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© 社団法人 日本透析医学会
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