日本透析療法学会雑誌
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兵庫県における10年以上透析患者の近況および合併症 アンケート調査より
永井 博之申 曽洙金津 和郎後藤 武男岩崎 卓夫松本 昭英宮本 孝堀口 幸雄大植 春樹永井 徹郎内藤 秀宗寺杣 一徳江尻 通麿国吉 政一廣内 恒坂井 瑠実原 信二
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1987 年 20 巻 12 号 p. 943-949

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抄録
我々は兵庫県内における透析歴10年以上の長期透析患者についてアンケート調査を行ない32施設, 233名について集計することができた. 全体の性別では男性 (138名) が女性 (95名) より多かったが, 男性の多い傾向は透析年数が長い例に著明であった. 年齢は21歳から75歳まで (平均47.1±10.0歳), 初透析時の年齢は11歳から63歳まで (平均35.2±10.2歳) であった. 透析方法は, 内shuntを使用 (89.2%) して, 外来 (96.1%) で, 重曹透析液を使用 (79.2%) し, 透析液原水としてreverse osmosis水を使用 (85.3%) し, hollow fiber型透析器を使用 (99.1%) した血液透析 (99.1%) を行っていた例が大多数であった. また透析回数は3回/週, 透析時間は15時間/週の患者が最多であった. 2回/週の透析患者は, その過半数で尿量0であったが十分に全身状態が良好に保たれていると思われた. 対象患者の原疾患は, 慢性糸球体腎炎が最も多く, 糖尿病性腎症は最近の透析導入例の傾向と比べて著明に少なかった. また有職者は全対象患者の42.1%, 主婦は20.6%, 無職者は32.2%を占めていた. 昭和60年12月頃の各種検査値の平均は, 透析患者としては良く管理された値と言えるが, 個々の症例ではかなりの異常値も存在した. これらの値は男性は女性に対して, また有職者は主婦および無職者に対して有意なhematocrit高値, 心胸比低値, creatinine高値を認めた. 透析導入期より昭和60年12月に至るまでに経験した合併症に関しては, 対象患者の85.0%が主要なものを少なくとも1つ以上経験していた. これらの合併症のうち腎性骨異栄養症・心不全・肝炎・高血圧・感染症・手根管症候群・低血圧等が比較的多数を占めていた. また経時的観察によると, 腎性骨異栄養症・手根管症候群・低血圧・不整脈・虚血性心疾患は増加傾向が, 心不全・心外膜炎・高血圧は減少傾向が見られた. 特に腎性骨異栄養症と手根管症候群の近年における増加が著明で, 両者とも透析15年以上の患者で特に合併率が高かった.
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© 社団法人 日本透析医学会
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